第73回 日本生物工学会大会(2021)後記

大会実行委員長 上平 正道

第73回日本生物工学会大会は2021年10月27日(水)~29日(金)の3日間で開催されました。新型コロナウイルス感染症拡大の問題により、当初は沖縄コンベンションセンターにおいて開催すべく準備を進めていましたが、1月に発せられた2回目の緊急事態宣言を受け、現地での大会の実施は難しいと判断し、本年度の大会は全てオンラインで行うことにしました。九州支部が担当する大会としては2015年の鹿児島大会以来6年ぶり5回目であり、本学会の年次大会としては初めての沖縄での開催として、企画段階では大会開催時期が台風シーズンと重なるため支部内でも賛否の議論がありましたが、2017年の支部大会を琉球大学で開催した経験などを考慮して、会期を10月末にずらすことで支部が一丸となって取り組むことにしていました。この間沖縄では首里城の焼失といったこともあり、大会を開催することで復旧機運を高めたいとの思いもありましたが、残念ながら今般のコロナ禍により願いかなわずとなりました。いつか、沖縄での年次大会開催が実現されればと思います。

オンライン大会に変更したことで一番危惧されたことは、参加者や講演数の大幅な減少でありました。コロナ禍により2020年以降の学会・講演会は軒並み中止かオンラインになっており、他の多くの学会ではオンライン大会となったことで参加者・講演者数が通常時の6割に減少したとの情報がありました。大会の運営経費が参加費や展示会企業による出展費で賄われていることから、大会開催によって赤字が出るのではないかといったことが懸念されました。昨今、学会運営での長期展望で持続的な発展のために経常的な収益の確保が命題となっており、その中で年次大会が占める役割も大きいため、赤字にはならないようにとのプレッシャーがありました。参加費は従来の大会と同様にさせていただきましたが、幸いなことに、演題数、参加者数とも予想されたほどの減少はなく、1244名の参加をいただき、内容としては従来大会と比べて遜色なく実施することができました。本学会の存在意義が証明されたものとしてうれしく思うとともに、本大会にご参加いただいた皆様に心より感謝申し上げます。

会長挨拶

福﨑英一郎会長

五味勝也先生(生物工学賞)

五味勝也先生(生物工学賞)

金井宗良先生(江田賞)

金井宗良先生(江田賞)

諸星知広先生(斎藤賞)

諸星知広先生(斎藤賞)

大会プログラムは従来大会と同様に、授賞式・受賞講演、シンポジウム、一般講演の他、ランチタイムセミナー、懇親会、若手交流会、展示会などを行いました。初日午前に各賞の授賞式、受賞講演を行い、3日間にわたって午後には、18課題のシンポジウムを行いました。2日目と3日目の午前は、一般講演にあてました。シンポジウムでは、本学会が特色としている発酵や醸造に関するものから、バイオエコノミー、カーボンリサイクル、ゲノム合成、デジタルバイオといった、バイオテクノロジー分野の最新の話題について合計86演題を、Zoomのウェビナーによってリアルタイムで行いました。一般講演は494演題をエントリーいただきました。演題数は、例年と比べて学生参加者の発表が少なくなったため、一昨年の岡山大会の8割程度でした。

一般講演では、講演者にあらかじめ12分間の口頭発表をビデオ収録したものを提出いただき、大会参加者には大会ホームページから大会開催週の月曜日から会期期間中オンデマンドで視聴できるようにし、設定した発表時間枠では、所定のZoomルーム(ブレイクアウトルーム)に入っていただき、参加者に内容説明・討議を行う形で実施しました。本大会では初めての試みでしたが大きな混乱はなく実施できたものと思われます。内容を深く知るうえでは、オンライン大会ならではの利点も見られたように感じました。さらに改良を加えて次回以降の大会でもうまく取り込むことができればと思いました。今大会においても、話題性のある一般演題29題をプログラム編成委員が選定して事前に講演者に解説原稿を提出いただき「トピックス集」としてまとめました。会期前の10月15日にはオンラインでプレス発表を行い、大会概要案内とトピックス講演を紹介しました。また、プログラム編成委員の投票によりトピックス講演の中から3題を「トピックス賞」として選考し懇親会の場で発表しました。展示会にも、オンラインという制約がある中多くの企業に出展いただきました。この場をお借りして心より感謝申し上げます。

ここから簡単に日程を振り返りますと、まず初日午前に本年度各賞の授賞式を行いました。福﨑会長、KSBBのChoul-Gyun Lee会長の挨拶のあと、功労会員推戴式、各賞の授賞式、続いて、功労賞、学会賞、功績賞、技術賞の受賞講演が行われました。ランチタイムセミナーを挟んで、午後には5件のシンポジウムがウェビナー形式で行われました。各講演での参加者からの質問は、質問者がQ&Aに書き込んだものを司会者が紹介しながら講演者が回答する形式でしたが、対面のような白熱した議論とはなりませんが、講演中にも質問者が自由に書き込めることから、率直な意見が交わされたように思いました。

18時30分からオンラインで開催した懇親会には約130名の方にご参加いただきました。今回は、少しでも沖縄大会の気分を味わっていただくために、参加登録者に沖縄料理や沖縄の泡盛・ビールが詰め合わせとなった沖縄懇親会セットを購入していただくことにしました。大会実行委員長挨拶の後、来賓代表として琉球大学西田学長からのビデオ祝辞に続いて、福﨑会長から挨拶と乾杯の発声をいただきました。愛好家・専門家の方々から、沖縄セットに含まれている沖縄料理や泡盛・ビールの説明をいただきました。その後、Zoomブレイクアウトルームに分かれてグループ懇親会を行いました。グループ懇親会では事前に参加者が提出した写真と自己紹介をもとにグループ内でのトークに花を咲かせました。2回グループ変更を行いましたが、限られた時間でありましたが楽しむことができました。最後には、参加者の投票により写真コンテストを行い、優秀賞を決定しました。オンラインの制限がある状況の中、沖縄大会ならではの楽しい懇親会を企画いただいた琉球大学平良先生、外山先生に感謝申し上げます。

オンライン懇親会の様子「乾杯!」

オンライン懇親会の様子「乾杯!」

2日目は、午前に江田賞、斉藤賞の受賞講演と一般講演を行いました。一般講演では、7つのアクセス会場を設け、分野ごとに分類した演題をブレイクアウトルームに割り振り、講演者は割り当てられた時間帯に所定のルームに待機して入室してきた参加者に発表・討論する形式で行いました。あらかじめ、発表ビデオを視聴しておけば発表者と有意義かつ効率的な議論ができるものと感じました。まだこのような形式に慣れていない点もあったと思いますが、従来型の口頭発表やポスター発表にない利点があるように思います。ランチタイムセミナーを挟んで、午後には6件のシンポジウムとKSBB、BESTとの国際シンポジウム「Biotechnology for SDGs」が開催されました。各シンポジウムとも多くの参加者がありました。18時からは若手会総会・交流会がオンラインで行われ、コロナ禍でも学会の次世代担う若手の交流が行われました。

3日目は、午前に照井賞、アジア若手賞の受賞講演と一般講演を行いました。ランチタイムセミナーを挟んで、午後に6件のシンポジウムが開催されました。オンラインではありましたが、最終日まで多くの参加者に聴講いただき終了いたしました。

最後になりましたが、大会開催にあたって、準備から実施までご尽力いただきました学会執行部の先生方、実行委員の先生方、学会本部事務局の皆様、スムーズな大会運営にご協力ご支援いただいた企業および関係団体の皆様に心より感謝申し上げます。


<沖縄懇親会セット>

沖縄懇親会セット(ノンアルコールセット)

ノンアルコールセット

沖縄懇親会セット(アルコールセット)

アルコールセット

沖縄懇親会セット(盛り付け例)

盛り付け例


<写真コンテストでエントリーされた作品>