シンポジウム – 趣旨一覧
最終更新日:2018.08.27
1.資源作物生産から発酵生産までをトータルシステムとして俯瞰する
- オーガナイザー:酒井 謙二(九大)・ 伊藤 幸博(東北大)・青柳 秀紀(筑波大)
資源作物を原料とする有価物の発酵生産技術の研究開発は本会の重要な専門領域であり、発酵基質に適した資源作物のデザイン、優れた微生物の獲得・育種および、効率的生産プロセスの構築などに細分化され、各領域で成果を上げている。これらを実用化へステップアップするためには、異なる領域研究者(発酵工学者と植物育種学者)の連携とともに全生産フローを俯瞰できる視点・感性が求められる。本シンポジウムでは、各領域の最新成果を紹介しつつ、技術・資源をトータルシステムとして産業界へ応用するための問題提起・あり方を議論する。
協賛: サスティナブル工学研究部会、未培養微生物(微生物ダークマター)資源工学研究部会
2.糖鎖工学技術がもたらすバイオ医薬品の新潮流
- オーガナイザー:三﨑 亮(阪大)・加藤 紀彦(京大)・千葉 靖典(産総研)
バイオ医薬品市場の急速な拡大に伴い、翻訳後修飾の制御を含めた生産物の高品質化が切望されている。特に、糖タンパク質性医薬品が提示する糖鎖構造の多様性は、高品質化に向けて解決すべき問題点である。本シンポジウムでは、高付加価値バイオ医薬品生産を目指した糖鎖構造の制御・均一化、および糖鎖を活用した創薬に注力する国内産学の研究者と生産者より、工学的糖鎖改良方法の現況と新たに見えてきた課題を紹介いただき、本学会にて糖鎖工学が産学協働で目指すべき展望を議論したい。
3.工学が見出すエッセンシャル細胞培養
~動物細胞培養の根本に工学はどう立ち向かうか~【本部企画】
- オーガナイザー:河原 正浩(東大)・加藤 竜司(名大)・児島 宏之(味の素)
動物細胞培養は、次世代バイオ医薬品(抗体医薬や細胞医薬)の根幹を担う基盤であるが、さらなる高度な細胞培養を実現するには更なる工学的飛躍が強く求められている。現在も、多くの細胞培養を牽引するのは、歴史から受け継いだ容器、培地組成、モニタリング方法などの「常識」と「ブラックボックス」である。細胞を用いる産業の更なる発展には、現在の細胞培養の根幹に、工学のメスを入れる必要がある。本シンポジウムは、現在の最先端工学技術の観点から、いかに常識を覆す「新しい細胞培養」を工学が生み出せるか、その課題と可能性について議論する。
4.Bioengineering for Sustainable Agriculture and Food Production for the Future
【本部企画】
「新しい農業と未来の食料のための生物工学」《国際シンポジウム》
- オーガナイザー:今井 泰彦(キッコーマン)・髙木 忍(ノボザイムズ ジャパン)
田口 精一(東農大)・児島 宏之(味の素)・安原 貴臣(アサヒグループホールディングス)
人口増加に合わせて持続可能に食料を増産してゆくためには、高効率なスマート農業や、化石製品に頼らない新しい生物系農薬・肥料が重要となってくる。さらに限られた農地に代わり、気候変動の影響を受けにくい植物工場も益々発展すると思われ、そのための周辺技術開発も必要となる。一方、従来の作物に代わる水生植物の様な新たな食料の栽培や、人工肉(培養肉)開発への挑戦も進行中である。これらに関するトピックスを紹介し、持続可能な社会へ向けた産学連携による生物工学の方向性を考える機会を提供する。
5.発酵食品の機能性を考える ~一次機能から三次機能まで~【本部企画】
- オーガナイザー:髙瀬 良和(霧島酒造)・堤 浩子(月桂冠)・山田 修(酒総研)
日本文化の和食が見直され、世界でその価値が認められるようになった。和食の中で発酵食品がなす役割は、栄養価値、おいしさを作り出すだけでなく、近年、生体調節機能に与える影響も多く発表されている。健康寿命を延ばす上にも食生活の中で日常的に食することが大切である。本シンポジウムでは、微生物が関与する発酵食品の機能を今一度考えてみることで産学から新しい発想が生まれることが期待される。
6.構造と機能デザインによる有用人工酵素の創製と応用展開
- オーガナイザー:大島 敏久(大工大)
近年の酵素の立体構造解析、ゲノム情報解析、生化学的機能解析などの発展により、天然にはない産業的に有用な人工酵素を合目的にデザインし、新規機能をもつ人工酵素を創製することが容易になっている。酵素の精密な構造と機能情報を踏まえた、反応特異性、基質や補酵素特異性の改変、触媒活性の増強、耐熱性や有機溶媒耐性などを改善させた人工酵素の創製に関するこれまでの研究成果をシンポジウムでとりあげ、今後の有用酵素の機能デザイン法の開発と応用展開をはかり、この分野の今後の飛躍を図る。
7.スマートバイオデザイン:ナノからマクロスケールまでの様々な階層レベルにおけるバイオ関連機能と構造の合理的創出を目指して
- オーガナイザー:新井 亮一(信州大)・座古 保(愛媛大)・ 梅津 光央(東北大)
近年、合成生物学やナノバイオ関連研究の進展は著しく、生物工学分野においても今後益々重要となる。そこで、本シンポジウムでは、ナノからマクロスケールまでの様々な階層レベルにおける先進的なバイオ関連機能及び構造の合理的創出を目指す「スマートバイオデザイン」をコンセプトに掲げる。多様なアプローチで「スマートバイオデザイン」に挑む、基礎から応用まで幅広い分野の研究者が一堂に会して議論することで、関連研究の創発やイノベーションを生み出す新潮流を起こす。
後援:信州大学菌類・微生物ダイナミズム創発研究センター
8.タンパク質と材料界面の相互作用の本質に迫る
- オーガナイザー:堀 克敏(名大)・黒田 章夫(広島大)・梅津 光央(東北大)・神谷 典穂(九大)
バイオと材料が織りなす新しい融合マテリアルやバイオデバイスの開発には、融合界面を設計・制御することが重要となる。単に材料表面を修飾してタンパク質を固定化する様な従来技術から脱却し、生体分子認識反応を効率的に行わせる様な画期的な界面制御技術を進展させなければならない。本シンポジウムでは、タンパク質と材料界面、無機結晶界面、ナノマテリアル等との相互作用の本質を探り、新しいバイオ無機ハイブリッド材料の創生も目指して議論する。
9.真核微生物におけるシグナル伝達と代謝の接点を探る
―発酵調節の根源的な理解に向けて―
- オーガナイザー:渡辺 大輔(奈良先端大)・水沼 正樹(広島大)
細胞は、環境に応じたシグナル伝達を介して適切な代謝経路を作動させ、自らを構築するための材料やエネルギーを生産する。酵母や麹菌などの真核微生物において、多様なシグナル伝達経路が見出されているにも関わらず、それらの代謝や発酵生産への関与については未知な部分も多い。本シンポジウムでは、シグナル伝達の観点から代謝調節の鍵を握るメカニズムの解明を目指す若手研究者が集い、そのバイオテクノロジーにおける意義を提唱したい。
10.エネルギーを使う、捨てる光合成の再最適化
―光合成生物工学にむけた未踏研究―
- オーガナイザー:清水 浩(阪大)・魚住 信之(東北大)
継続的な光合成には、光エネルギーを使うとともに、上手く捨てる機構が必要であることが分かってきた。現存の光合成生物は局所環境に適応進化し、「光エネルギーの効率的利用」と「過剰光からの防御」のバランスを調節している。本シンポジウムでは、光合成生物の工学利用を目指し、プロトン駆動力の解析や光化学系における電子伝達と中枢代謝のシステム解析を軸にして、光合成の最適化に導くまだ教科書には記述されていない最新の研究を展開する研究者を招待し、光合成生物工学の新たな展開を議論する。
共催:文部科学省科学研究費補助金新学術研究「新光合成:光エネルギー変換システムの再最適化」
11.半金属元素のバイオテクノロジー
- オーガナイザー:山下光雄(芝浦工大)・池 道彦(阪大)
近年、半導体材料等としてケイ素・ヒ素・アンチモン・セレン・テルル等の半金属元素の産業利用が活発になっている。これに伴い、半金属元素による環境汚染の浄化技術、半金属資源回収技術、及びこれら元素を活用した機能性材料・モジュールの開発の需要が高まっている。本シンポジウムでは、微生物の代謝の活用によりこれら半金属元素を自在に変換し活用する技術の開発状況について、4名の研究者から講演頂き、半金属元素のバイオテクノロジーという新たな研究領域の可能性について議論する。
12.黒麹菌・白麹菌の研究からつなげる産業振興
- オーガナイザー:外山 博英(琉球大)・塚原 正俊(バイオジェット)
黒麹菌Aspergillus luchuensisは、国菌の1つとしても認定されている重要な微生物であるものの、近年まで分類が混乱していた。最近、黒麹菌はA. luchuensisとして再定義されると共に全ゲノム配列が公開されたことから、黒麹菌研究の基盤が整った。本シンポジウムでは、これらの経緯や最新の研究成果と共に文化的な側面について紹介することで、基盤研究からつなげる地域貢献について議論したい。
13.複雑組織製造に必要な基盤技術を考える
―どこまで出来て,何が足らないのか?―
- オーガナイザー:長森 英二(大工大)・境 慎司(阪大)・藤田 聡史(産総研)
単一細胞種を用いた再生医療の実現が近づき、これを下支えする細胞製造技術がアカデミアや企業によって活発に研究・構築されつつある。一方、次世代再生医療に期待される血管網や神経網など複雑構造を有する機能的組織製品の製造には未だ超えるべきハードルは多く、新領域的技術の創生・具現化は欠かせない。複雑組織工学の設計・製造を目指し活発に活動するパイオニアや若手研究者による講演とパネルディスカッションを通し「現状技術ではどこまで出来て、何が足りないか」を議論することを目的とする。
共催:化学工学会バイオ部会メディカル分野専門分科会
次世代アニマルセルインダストリー研究部会
14.SDGsに資する環境共生微生物を活用したアグリバイオ工学研究の新展開
- オーガナイザー:宮本 浩邦(サーマス・千葉大・理研)・菊地 淳(理研)
自然界では多くの生物が共生関係にあり、相互に影響しあっている。本シンポジウムでは、これらの共生生物に関わる研究動向として、根圏微生物と植物との相互作用、腸内フローラと家畜・家禽類、魚類の健康との関係、環境微生物を活用した排水負荷の低減などに関する最新のフィールド・オミクスやデータサイエンスを紹介する。これらの研究事例を対象として、SDGs (持続可能な開発目標)を視野に入れた生物工学的アプローチの必要性について議論していく。
15.地域から世界へ,グローカルバイオテクノロジーで創る新しい価値
- オーガナイザー:古賀 雄一(阪大)・河原崎 泰昌(静岡県大)
仲嶋 翼(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
日本・世界各地の地域生物資源を活用し、食品、医療、環境などの社会問題を解決することが期待されている。地域生物資源活用において我が国が目指すビジョンや政策・検討状況を共有し、さらに国内外の先進事例動向をまとめ、生物工学が世界で持続的に認められる新しい価値を地域生物資源から創造するためにどのように関わることができるのかを考える。
共催:生物資源を活用した地域創生研究部会(グローカルバイオ研究部会)
16.環境は持続可能か?
―地球規模の物質循環を生物工学から考える―
- オーガナイザー:新谷 政己(静岡大)・寺田 昭彦(農工大)
持続可能な社会を構築する上で、窒素やリン等農業に必須な物質の地球規模の循環は重要である。それらの物質は人類の発展とともに急激に消費され、その循環は不可逆的な閾値を超えつつある。こうした危機的状況は、既に何度か注目されてきたものの継続的な発信がなされなくなりがちである、本シンポジウムでは、いくつかの元素の物質循環に焦点を絞り、日本固有の現状や対策等の最新情報を提供し、参加者にも可能な取り組みについて議論する。
共催:NPO法人環境バイオテクノロジー学会
17.スマートセル開発のためのバイオ技術とデジタル技術の革新と融合
バイオ生産に資する DBTLサイクルの構築に向けて
- オーガナイザー:近藤 昭彦(神戸大)・ 向山 正治(日本触媒)
スマートセルによる物質生産の実現には膨大な生物情報から目的化合物を効率よく生合成する代謝経路・遺伝子のデザイン(Design)、ゲノム編集技術などを利用した生物機能の精密な発現制御や大サイズ遺伝子の導入(Build)、作成した生物から得られる膨大な情報の把握(Test)と生物機能ルールの抽出(Learn)が重要である。バイオ技術とAI・デジタル技術の融合によって新たなモノづくりを実現するスマートセルインダストリーの最新の取り組みについて議論する。
共催:バイオインダストリー協会 新資源生物変換研究会
後援:NEDO 新エネルギー・産業技術総合開発機構
18.1細胞解析に向けた刺激応答性分子ツールの創製と応用展開
- オーガナイザー:吉野 知子(農工大)・山口 哲志(東大)
近年、治療用細胞・機能性細胞の生産や医療検体の細胞診断に資する1細胞解析・操作技術が盛んに研究されている。中でも、個々の細胞を選択的に配置・単離し、ユニークな1細胞解析を実現できる刺激応答性の分子ツールが注目されている。そこで、1細胞解析に資する刺激応答性材料やそれらを用いたユニークな1細胞解析法を開発している若手研究者が最新の研究成果を報告し、将来展望や新規材料・技術の開発指針についてシニア研究者とともに熱く意見交換する。
19.Networking of Researches Toward Social Implementation of Bioresources Rich in ASEAN
「ASEANにおける生物資源の社会実装を目指した研究ネットワーキング」《国際シンポジウム》
- オーガナイザー:藤山 和仁(阪大)・福崎 英一郎(阪大)
生物資源が豊富なASEAN地域で活躍する研究者による生物資源利用研究の実例を紹介する。また、同地域の微生物保存機関ネットワークについて説明し、資源へのアクセス時に懸念される生物多様性条約関連事項の解説を受ける。今後ASEAN地域との研究連携の強化と促進を図り、学会・研究者間のネットワーク形成を目指す契機とする。
20.新時代の物質生産宿主開発の方法論:
ゲノムを大規模に編集する。代謝計測から設計図を書く。
- オーガナイザー:丸山 潤一(東大)・松田 史生(阪大)
微生物を利用した有用物質の生産性の向上には、宿主の代謝経路の改変が有効である。近年、様々な生物で遺伝子改変の劇的な効率化をもたらしたゲノム編集をもとに、宿主に対して多重・多段階の遺伝子操作を効率よく行う技術が開発され、代謝経路を無限に改変することが可能になった。これにより、代謝制御機構の理解に基づく、より合理的な代謝設計が求められるようになってきた。本シンポジウムでは、物質生産の宿主開発技術の最先端とともに、代謝経路間の相互作用を解析する新規分析手法を紹介し、物質生産宿主開発の新たな方法論について議論する。
共催:文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究 「生合成リデザイン」
21.生物系研究者のための電気化学入門 ~その実験大丈夫?~
- オーガナイザー:若井 暁(神戸大)
近年、電気化学実験を行う生物系研究者が増えているが、電気化学を専門とする研究者から実験系と解釈における問題点を指摘されるシーンも見られる。異なる研究領域の研究者が異分野融合を進めていく上で、この様なズレは致命的である。そこで、非生物系の他学会で活躍する新進気鋭の若手研究者を講師として招き、初心者が間違えそうな例と共に、明日にでも実験を始められる基礎から、最新の異分野融合展開について講演を頂く。
協賛:腐食防食学会、日本鉄鋼協会 材料の組織と特性部会、e-Bio研究会、微生物腐食研究若手会