シンポジウム趣旨一覧
1.次世代のバイオプロセスを拓く複合微生物系精密制御技術
- オーガナイザー:常田 聡(早大)・加藤 純一(広島大)・春田 伸(首都大)
複合微生物系のダイナミックな変化、未培養微生物の性質・挙動や多様な種間相互作用が明らかになってきている。しかし、複合微生物系をバイオプロセスに応用し、有効に活用するためには、複合微生物系の群集構造や機能を人為的に制御する技術の開発が必要である。本シンポジウムでは、「複合微生物系制御技術」についてのCutting Edgeテクノロジーを集め、今後の課題や方向性を議論する場としたい。
共催: 環境バイオテクノロジー学会
2.複雑組織製造に必要な基盤技術を考える~バイオリアクターの側から~
- オーガナイザー:長森 英二(大工大)・伊藤 大知(東大)
次世代再生医療技術として、複雑構造(血管網や神経網など)を有する機能的組織製品の実現が予期される。この実現には、複雑組織構造を作り、機能的に育み、適切にその機能評価が可能な技術の一連が求められる。2018年度大会では同タイトルにて、複雑組織を作り上げるための技術群に着目した。本大会ではバイオリアクター側に求められる要素技術について議論をしたい。
共催:化学工学会バイオ部会メディカル分野専門分科会、次世代アニマルセルインダストリー研究部会
筋スマート社会実現コンソーシアム
3.微生物ダークマターとマイクロバイオータ研究が導く新しい生物工学
- オーガナイザー: 花井 泰三(九大)・青柳 秀紀(筑波大)・石井 正治(東大)
環境中に存在する全微生物であるマイクロバイオータのうち、99%以上の微生物は培養不可能で微生物ダークマターと呼ばれ、未利用のまま存在している。マイクロバイオータと微生物ダークマターの研究を通じて、新たな機能を有する遺伝資源、微生物、マイクロバイオータを利用することができれば、医薬、環境、発酵、食品など様々な分野で多大な貢献ができる。本シンポジウムでは生物工学会に所属するこの分野の研究者を中心に、発表を行い、理解と議論を深めたい。
4.大規模な遺伝子・ゲノムを扱うツールとしての接合伝達システムの開発と展望
- オーガナイザー:板谷 光泰(慶大)
多数の遺伝子を同時に扱って生物機能を向上させる技術は、ゲノムシーケンス時代で必須のツールである。多数の遺伝子を設計通りにつなぎ合わせる長鎖DNA調製手法が開発されているが、長鎖DNAサイズは巨大>50(kbp)になる。このサイズのDNAを対象生物に効率のよく導入する手法として接合伝達を利用する遺伝子導入手法が注目されている。本邦で独自に取り組んでいる演者らによる現状と将来を展望したい。
共催:高機能遺伝子デザイン技術研究組合(TRAHED)
5.Development of Biosensing Technology Targeting Sustainability Development Goals
「持続可能な開発目標を目指したバイオセンシングの開発と展開」《国際シンポジウム》
- オーガナイザー:朴 龍洙(静岡大)・民谷 栄一(阪大)
2015年国連持続可能な開発サミットが開かれ、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための17の目標と169のターゲットからなる持続可能な開発目標(SDGs)」が採択された。本学会で築き上げてきたバイオテクノロジーは、SDGsの達成に欠かせない。本シンポジウムでは、日進月歩するナノ科学技術と生命科学の融合によるSDGsの推進に焦点を当て、当分野で活躍されている国内外の研究者らによる研究紹介と討論できる場を設けたい。
共催:ナノバイオテクノロジー研究部会
協賛:産総研・阪大 先端フォトニクス・バイオセンシングオープンイノベーションラボラトリ
6.酵母におけるアミノ酸研究の新展開
- オーガナイザー:高木 博史(奈良先端大)・ 水沼 正樹(広島大)
アミノ酸は単なる生体分子としてのみならず、多彩な生理機能(発生、代謝、ストレス耐性、老化・寿命など)を制御することが見出されてきた。また、「アミノ酸機能工学」のように、アミノ酸の機能性(細胞へのストレス耐性付与)に着目し、有用物質の高生産を可能とする微生物の育種手法も提案されている。本シンポジウムでは、酵母におけるアミノ酸の新規な生理機能や代謝制御機構に関する最新の研究成果を紹介し、産業への応用を含む今後の展望を議論したい。
7.Recent Topics on Cultivation and Measurement: New Challenges by Start-Up Companies【本部企画】
「培養計測の最近のトピックス~スタートアップ企業による新たな取り組み~」《国際シンポジウム》
- オーガナイザー:富田 悟志(エイブル)・佐久間 英雄(丸菱バイオエンジ)
今井 泰彦(キッコーマン)・児島 宏之(味の素)・安原 貴臣(アサヒビール)
幅広い生物の能力を生物工学的な手法で発揮させ、新たな価値創造につなげることが強く期待されている。また新たな測定手法の開発が新たな価値創造につながる。本セッションでは、培養技術、計測技術に焦点を当て、国内スタートアップ企業を中心にご紹介頂く。最先端の技術開発とその展開に関するディスカッションは幅広い事業展開を通じた商業的発展に向け、産学連携を介した公益につながることが期待される。
8.微生物ポリアミンが支える高齢化社会の生活
- オーガナイザー:藤原 伸介(関西学院大)・栗原 新(石川県大)
ポリアミンは全ての生物に普遍的に含まれる低分子の塩基性物質であり、細胞の増殖分化と密接に関わっている。最近の研究から発酵食品には多量のポリアミンが含まれており、微生物の生産するポリアミンが、人の健康と長寿に深く関わっていることが明らかになってきた。本シンポジウムでは微生物の作るポリアミンの役割に焦点をあて、最新の知見、特に「ひとの暮らしの向上」に繋げる情報を提供したい。
協賛:日本ポリアミン学会
9.日本におけるバイオジェット燃料生産技術の最先端
- オーガナイザー:乾 将行(RITE)・鈴木 健吾(ユーグレナ)
世界CO2排出量の約2%を占める航空機からのCO2排出は、地球温暖化における喫緊な課題であるが、航空機は電動化などが困難なためバイオジェット燃料への期待が大きい。本シンポジウムでは、バイオジェット燃料普及に取り組んでいる日本航空から現状と展望を、これに続き、国内最先端の藻類(ユーグレナ、IHI)、ガス化FT法(三菱日立パワーシステムズ)、ATJ[Alcohol to Jet]と新規技術(RITE)などバイオジェット燃料の生産技術を紹介する。
共催:バイオインダストリー協会 新資源生物変換研究会
10.新しいデータ駆動型サイエンスによる複雑な生命現象の理解
- オーガナイザー:青木 航(京大)・植田 充美(京大)
複雑な生命現象を理解するためには、データ駆動型サイエンスが強力な手法となる。しかし、他因子相互作用系や、細胞ネットワークレベルおよび個体レベルの生命現象など、既存の方法論では解析しにくいターゲットも多数存在する。そこで本シンポジウムでは、新しい発想に基づいてデータ駆動型サイエンスを拡張し、それを用いて複雑な生命現象を理解しようと試みる基礎的研究から応用的研究までさまざまな生物工学的な知見を紹介し、今後の生命科学の展望について議論する。
11.生合成工学における有用生体機能分子の次世代創製技術
- オーガナイザー:荒川 賢治(広島大)・丸山 千登勢(福井県大)
ポストゲノム時代の今、二次代謝産物の生合成研究は急速に発展しており、人為的な生合成改変、非天然型新規化合物の創出、コンビナトリアル生合成による化合物ライブラリーの構築、制御因子・低分子エリシターなどによる二次代謝の人為制御、希少有用物質の安定供給など合成生物学的アプローチが実用的なレベルに達しつつある。本シンポジウムでは、これら研究の最前線、および、深化した生合成再設計の技術について「科研費新学術領域研究・生合成リデザイン」との共催で提供する。
共催:科研費新学術領域研究・生合成リデザイン
12.生体と対話するナノ界面科学
- オーガナイザー:梅津 光央(東北大)・吉野 知子(農工大)・大河内 美奈(東工大)
生体の物質世界の情報とサイバー空間の電子情報を相互交換できるバイオセンサー・デバイスは、私たちの実世界とサイバー空間をシームレスにつなぐ未来社会のキーデバイスであり、センサ検出、AI 判断、アクチエータ動作などが混然一体となって機能する世界が始まりつつある。本シンポジムでは、生体・細胞とデバイス分野の両側面から実世界とサイバー空間の相互通信を意識した界面構造やバイオデバイスに関する最新研究の講演を行い、生体とデバイスが高度な対話するために求められる界面設計を議論する。
13.微生物による物質生産の新展開
- オーガナイザー:清水 浩(阪大)
微生物による物質生産は様々な新展開を見せている。本シンポジウムでは、大腸菌、酵母、シアノバクテリアなど微生物を基盤とする物質生産の最新の研究を進めている演者を招いてそのフロンティアを議論する。イリノイ大学Yong-Su Jin教授、高麗大学Sung Ok Han教授(KSBBからの招待者)も迎え国際的なシンポジウムとしたい。日本人の先生には日本語で講演いただくことを考えている。
14.食農工産業の持続的発展を牽引する次世代植物バイオテクノロジー
- オーガナイザー:岡澤 敦司(阪府大)・高橋 征司(東北大)・田口 悟朗(信州大)
バイオテクノロジーや情報技術などの急速な進歩に伴い、これらを活用した農業が食農産業として発展する兆しが見えている。新展開を見せている食農産業の持続的発展には、植物バイオテクノロジーを基軸とする農工連携が大きな役割を担うと期待される。本シンポジウムでは、食農×農工の出口となる「食農工産業」を志向した産学連携研究の事例を紹介する。さらに、SDGs の達成に向けた展望を聴衆も交えて議論する。
協賛:次世代植物バイオ研究部会
15.持続可能な開発目標(SDGs)を生物工学にどう活用するか【本部企画】
- オーガナイザー: 安原 貴臣(アサヒビール)・児島 宏之(味の素)
田口 精一(東農大)・髙木 忍・今井 泰彦(キッコーマン)
このシンポジウムは、本学会の特徴である産学官の連携をさらに強化すること、また会長方針である「SDGsを念頭に置いた活動を強化する」に沿って、SDGsを軸に生物工学会として産学官で今後取り組むべき方向を提示したいと考える。なお、本シンポジウムは岡山大学からの協賛をいただいた上で、一般の聴講者も一定数受入れたいと考えている。シンポジウム前半では国内の一流の有識者による講演、後半ではパネルディスカッションを開催して、議論を通して生物工学技術の活用・貢献について考える機会とし、最終的にSDGsを軸とした社会実装に繋がる産学連携技術交流のきっかけとなることを目的とする。
共催:岡山大学
16.ペアで紹介します,WetとDryの融合研究
- オーガナイザー:堀之内 貴明(理研)・兒島 孝明(名大)
分析技術の発展に伴うデータ量の増大により、バイオインフォマティクス解析の生物工学分野における重要性が高まっている。しかしそれには高度な専門知識を要し、さらにターゲットや目的によって手法が多種多様である等のハードルが存在する。そのため研究者個人がWet実験ならびにDry解析の全てを扱うことは困難となってきており、Wet系ならびにDry系研究者の連携の重要性が高まっている。そこで本シンポジウムでは様々な分野や立場の研究者によるペアプレゼンテーション方式での講演(1つの研究テーマを2人の演者により発表する)を通じ、WetとDryの連携の秘訣を議論する。
17.タンパク質工学におけるドライ-ウェット技術融合の新展開
- オーガナイザー:今中 洋行(岡山大)
産業や医療への戦略的利用を志向したタンパク質・ペプチドの機能開発において、分子デザインは極めて重要である。その際、従来の進化分子工学的手法に加え、近年顕著な進展をみせる計算科学的手法の援用も浸透しつつあり、これらに対する需要はますます高まってきている。本シンポジウムでは、タンパク質工学における機能分子創出の最先端を紹介するとともに、ドライとウェットの技術融合に関する今後の展望について広く議論する。
18.物質生産や代謝制御における呼吸鎖の役割
- オーガナイザー:川向 誠(島根大)・藥師 寿治(山口大)
物質生産を考える上で、古くは酸素下におけるエタノール発酵の抑制として知られるパスツール効果のように、呼吸鎖(電子伝達系)と代謝制御の関わりついては知られている。近年、真核生物におけるミトコンドリア機能やミトファジーと代謝制御については、多く知見が蓄積してきている中で、原核生物、真核生物を問わず、物質代謝と呼吸鎖の関連性が現状どのように理解されているかを本シンポジウムで議論したい。
19.食品成分が腸内環境に及ぼす影響
- オーガナイザー:北垣 浩志(佐賀大)・中山 二郎(九大)
最近、食品の成分が腸内環境に影響を及ぼすという研究が多く報告されている。しかしそのメカニズムは明らかでない。そこで食品の成分が腸内環境に及ぼす影響を研究している新進気鋭の研究者を招聘し、シンポジウムを開催する。
20.世界を目指す日本の酒類【本部企画】
- オーガナイザー:堤 浩子(月桂冠)・山田 修(酒総研)・髙瀬 良和(霧島酒造)
日本の酒類の種類の輸出は量、金額ともに年々増加している。日本酒(SAKE)だけでなく、日本産のワイン、ビール、ウイスキーの品質向上のための技術開発や原料などの取り組みを続けている。その成果として、酒類は世界中で行われる酒類競技会で数々の賞に輝き、その実力が高く評価され、輸出額も大幅に伸張している。日本酒、日本ワインの固有品種の甲州なども地理的表示を取得し、世界を目指した日本の酒類についてのシンポジウムを開催したい。
21.インシリコタンパク質設計で加速するタンパク質工学・応用構造生物学
- オーガナイザー:伊藤 創平(静岡県大)・杉森 大助(福島大)・三原 康博(味の素)
生物由来の天然型タンパク質は、産業応用で求められるレベルでの安定性や生産性を達成することはまれである。そこで進化分子工学や合理的改変が検討されるが、成功率はタンパク質の種類や研究者のスキルに依存、適応できる対象も限られる。インシリコでタンパク質分子全体の設計を行う技術は、応用利用に耐えうる高機能なタンパク質を低コストで開発・設計する一つの選択肢である。本シンポジウムおいて、幅広い分野において活用が期待できる最先端の技術の開発と、その応用利用に挑む研究者が一堂に会し、新たな可能性と展望を見出したい。
共催:酵素工学研究会、AMED-CREST、静岡県立大学
22.動物細胞培養の新研究領域への挑戦
~学問の境界領域で起こるイノベーションを目指して~
- オーガナイザー:蟹江 慧(名大)・堀江 正信(京大)・岩井 良輔(岡山理大)・曽宮 正晴(阪大・産研)
20世紀初頭に動物細胞の培養が可能となって以降、動物細胞を用いた様々な研究が世の中に広がっている。しかし、100年以上たった現在でも、動物細胞に関して未解明な部分は非常に多く、動物細胞を用いた産業も未だ開拓・発展途上である。その原因として、一研究領域だけでは動物細胞の全てを解明、理解できないことに加え、研究者のみの視点では産業化は困難であることなどが考えられる。すなわち、動物細胞培養研究においても、異分野融合や産学連携がますます重要であり必須であるとも言える。
そこで、本シンポジウムでは動物細胞培養と他研究領域を組み合わせた、これまでに無い新たな切り口で動物細胞研究に挑む若手研究者を集め、5年、10年後のイノベーションを見据えた動物細胞培養研究を議論したい。また、企業研究者も招き、動物細胞を用いた製品開発に関する現状と今後の産業発展性に関しても議論したい。
23.産業化を目指した生体分子工学の新たな潮流
- オーガナイザー:座古 保(愛媛大)・上田 宏(東工大)・神谷 典穂(九大)
生物工学分野では、タンパク質などの生体分子の産業応用およびシーズ育成が重要である。そこで、本シンポジウムでは、生物を構成する様々な生体分子のハイブリッド化などを通した高機能化および新機能創成、またこれらのための新規な研究手法において、産業化に成功した研究者および開発・応用展開など様々なフェーズにおける研究開発の最前線に携わる研究者が一同に会する。これにより、生体分子工学が生物工学に果たしうる役割と今後の展望について議論する。