第63回 日本生物工学会大会(2011)後記
Posted date 2011.10.05 | Updated date 2011.10.05
第63回日本生物工学会大会は、2011年9月26日(月)から28日(水)の3日間の日程で東京農工大学小金井キャンパスにおいて行われました。天候にも恵まれ、多く参加者を集めることができ、各会場において活発な議論が展開されました。実行委員会を代表して、本大会の開催にご支援いただいた学会関係者、展示や寄付などをしていただいた企業、講演された皆様及びすべての参加者に感謝いたします。
大成功だった宮崎大会と90周年記念大会の狭間の大会なので、大会の原点である会員同士が活発に議論する場所を提供することを本大会の主たる目的として企画いたしました。まず、従来のシンポジウムを、シンポジウムとワークショップに分類し、シンポジウムは多くの会員の関心を持てるテーマに関する企画とし、各時間帯で1つだけ行うことにしました。ワークショップは本部と大会が企画するものに加え、公募を行いました。シンポジウムは3テーマ(1.酒類の食味成分研究の新展開(本部企画)、2. 大規模ゲノム情報の生物工学へのインパクト(本部企画)、3. 美しい地球持続のための脱炭素社会の構築(大会企画))、ワークショップは16テーマ(本部企画2、大会企画4、公募10)となりました。昨年度特別セミナーとして行われた「若手理系人のためのキャリアセミナー」も大会企画のワークショプとして開催することにしました。また、世界でもっとも売れている医薬品であるスタチンの開発者である遠藤章先生(東京農工大学特別栄誉教授)が米国アカデミー会員に選出されたことを記念して、特別招待講演をしていただくことにいたしました。
お気づきの方も多いと思いますが、要旨集の構成も変更しました。従来は編集の都合から会場ごとにまとめられていましたが、参加者の利便性を考えて日程ごとにまとめました。大会の後に質問することが可能なように、責任者のメールアドレスを入れることにいたしました。震災対応として、被害のあった地域から参加する学生の参加費を免除することにいたしました。23名から申請があり、申請者全員の参加費を免除いたしました。
本大会は、東日本大震災とその後の原子力発電所の事故によるさまざまな問題のため、開催が危惧されていました。さらに直前に台風15号の直撃を受け、キャンパス内で大木が数本倒れるという事態がありましたが、大学当局の迅速な対応により、倒木が処理され、大きな問題もなく大会を迎えることができました。
授賞式にて 前列向かって左から、荻野、中川、小髙、清水、髙木、中村、Nguyen Nhu Sang
後列向かって左から、花井、矢野、Siraje A. Mahmud、兒島、伊達、袴田(敬称略)
初日の午前中は、例年どおり授賞式・受賞の挨拶・受賞講演が行われました。誌面の都合で写真のみ紹介しますが、受賞された各位の今後のご発展をお祈りします。懇親会は初日の夕刻、吉祥寺の第一ホテルで開催しました。招待者を含めて約400名の参加を得ることができました。生物工学会の会員でもある松永是東京農工大学学長に来賓としてご挨拶していただきました。松永先生にはシンポジウムでのご講演していただいたほか、本大会の開催に多くのサポートをいただきました。遠藤章先生と中村修二先生にも加わっていただいた鏡割では、東京都の酒蔵である石川酒造の「多満自慢」を使わせていただきました。
遠藤先生は、乾杯のご挨拶で最初に発表したのが「大阪醸造学会・醱酵学懇話会」であるというエピソードを披露されていましたが、本会に参加されたことを大変喜んでおられました。時間が限られているために、挨拶や企画を可能な限り少なくして懇親の時間を確保することに努めましたが、それでも時間が足りなかったようで、私も含めた多くの参加者が吉祥寺の町で深夜まで親交を深めました。
シンポジウムとワークショップの演題数は特別招待講演も含めて96でした。一般演題は過去最大規模の654演題でした。この中から、プログラム編集委員会が特に話題性が高い26演題をトピックスとして選定しました。また、当該研究の背景や応用をわかりやすく解説していただいたトピックス集を作成し、大会会場で無料配布しました。さらに、大会に先立ち東京で行われた記者会見では、大手新聞社をはじめ10社以上を前に、本大会を代表する研究成果・シーズとして公開しました。その他、KSBBからの招待講演の4演題と受賞講演の一部が一般講演の時間に行われました。
大会参加者は、一般(正会員と非会員)1048名、学生会員402名(参加費免除者を含む)であり、招待参加者を含めると1500名を超えました。展示会には33社の出展がありました。会場の中心にスペースを確保したので、多くの参加者が展示会場を訪れました。
今回の大会で、心残りだったことが2つあります。宮崎大会の懇親会のときの次期大会の紹介で、まんが“もやしもん”に関する企画を紹介したことをご記憶の方も多いと思います。実際に、関係者を通じて原作者や編集者との交渉を行ったのですが、残念ながら私の力不足で実現に至りませんでした。多くの会員が“もやしもん”のファンであることから、今後の大会で実現できることを期待しています。また、東日本大震災の影響による資材の不足から、新総合会館の竣工が遅れ、表彰式の会場が変更になったことも残念でした。
大会の後、多数の関係者から会場係や受付の学生の態度についてお褒めの言葉をいただきました。今大会は東日本支部および東京農工大学のスタッフから構成される実行委員会と多数の学生アルバイトにより運営されました。本大会を成功に導くことができたのも彼らの献身的な貢献によるものであり、改めて感謝いたします。
さて、2日目の夜に恒例の「生物工学若手研究者の集い(若手会)総会・交流会」が第2食堂で行われ、私も参加いたしました。活発な議論が行われましたが、多くの方が発表を終えた安堵感と適量のエタノールの効果により、若手会の馬場会長のご提案で、急遽ボーリングを行うことになりました。有志十数名が集まり、懇親会が行われたホテルの地下にあるボーリング場で第1回若手会ボーリング大会が行われました。優勝者は、この大会後記で名前を紹介することにしたのですが、私が優勝してしまったので誰も紹介できないという残念な結果となりました。来年以降も行うということなので、研究と同時に若手の奮起を期待しています。
最後になりましたが、本大会が90周年記念大会への助走となり、生物工学会の発展につながることを祈念しています。
受賞講演会場にて
招待講演会場にて