【本部だより】日本生物工学会の改革へ向けて
(社)日本生物工学会
会長 飯島 信司
日本生物工学会は、2010年5月の総会における議を経て公益法人への申請手続きを進めております。これは、法律に基づいた学会の組織の形態の変更ですが、より重要なことは、学会が法人として公益性もって社会で果たすべき役割を明らかにすることであり、また一方では、会員皆様とともに学会の将来の方向性を考え、今まで以上に学会員としてのメリットを感じていただけるように作り上げることだと考えております。
年次大会の開催の機会に、会員の皆様に公益法人化の経緯をはじめ、理事会で議論している学会のあり方などご報告できればと考えています。この中には英文誌、公益法人化、アジアをリードするための国際戦略、産学官の多様な会員の皆様に対するサービスの向上が含まれます。
皆様方からの忌憚ないご意見を頂ければと思います。
昨年の活性化WG、理事会、アドバイザー委員会などにおける様々なご意見を集約して、次世代を見据え、
♦♦ アジアを拠点として世界をリードする学会となる
♦♦ 魅力あるバイオテクノロジーの学会となるとともに、産学官のあらゆる世代の会員へのサービスを充実する
を目標として掲げたいと考えています。 この目標を達成するために、理事会では学会の運営の改革について議論してまいりました。
検討項目は、
- 会員サービスの強化
- 会費のみでなく広く社会の支持を集めた寄附などを活用した学会活動を行うにはどうしたらよいか
- アジアでリーダーシップを発揮しともに進歩するためにはどうすべきか
- 魅力ある学会の行事とは
- 社会貢献の新たな取り組み
- 開かれた学会運営体制と事務局の強化をどのように図るか など
です。
以下、議論とアクションプラン(案)の大筋を示します。
⇒『日本生物工学会 本学会が目指すもの』(概要)
1. 会員サービスの向上
産学官の個人会員、賛助会員、展示会出展、広告掲載企業それぞれへのサービス強化
<検討中アクションプラン>
- 会員のJBB投稿料、年次大会参加費の引き下げと適正化の方策検討
- JBBアラートなどメールサービスの強化(実施済み)
- 会員による和文誌などを通じた情報発信の促進
- 産業界のニーズに応え、それを学官にフィードバックすることによる新たなイノベーションの創出(産業界のニーズを議論し発信する産学連携委員会の設置)
- 賀詞交換会等賛助会員との交流促進、和文誌における賛助会員のページの設定と情報発信の促進
2. 寄附など会費以外の収入に基づく学会活動の展開
これなら寄附してもよいと考えていただける学会活動とは何か
- 寄附を必要とする学会活動、行事の的確な説明と寄附の用途の透明性確保方策
- 冠シンポジウム、セミナー
- 寄附規定の制定(実施済み)
- 顕彰制度
- 個人及び少額寄附制度の検討
3. アジアでのリーダーシッップ
JBBのオンライン化で激減した海外会員を増強し、どのようにお互いに発展してゆくか。発展著しいアジアの情報を提供し、バイオテクノロジーの海外戦略にどのように貢献できるか。当面JBBを前面に出し国際的リーダーシップを発揮する。
【1】 JBBのインパクトファクター(IF~1.8)を維持上昇させ、リーディングジャーナルとしての地位の維持
- 商業ジャーナルに対抗し、レベルの高い論文を海外から集めるために海外からの投稿料を無料化する(実施済)
- JBBの海外戦略を理解いただき国内からも質の高い論文を投稿していただく。一方、分野的に不利が起きないよう歴史的にも学会の主要研究分野である培養工学、醸造学分野の論文が不利にならないようにする
- 論文賞該当論文の一部の選考に引用回数を考慮した枠を設ける
- 会員の投稿料を順次引き下げるよう努力する
【2】 アジアにおける交流の促進と海外会員の増強
- 海外アドバイザー制度を作り、生物工学会に対する意見を求めるとともに以下の活動の中心となっていただく。これらの活動により生物工学会の海外会員を増強する
- アジアの生物工学、生物工業の情報収集、和文誌等での公開
- アジアにおける人的交流の仲介
- 将来の海外学会と日本生物工学会のジョイント学会開催
- 国内における国際シンポジウムの開催
- ビール醸造、環境問題などターゲットをしぼり、アジア諸国と交流をはかる
4. 行事の見直し
時代の変化にあわせ学会全体の行事を見直す
- 大会におけるシンポジウムは、会員からの募集によるものと学会の長期的展望によるものの2本立てとし、産業界からの提案も積極的に受け入れる
- 支部持ち回りで開催していた生物工学シンポジウムと生物工学技術セミナーのうち前者を廃止し、長期的視野に基づいた国際シンポ、社会貢献に関するシンポ、up to dateな学術シンポを行う。理事会に企画委員会を設け、学会行事の質の向上をはかる。また産学連携委員会を設け、行事、年次大会などに産業界の目線を反映させる
- 企画理事(委員会)が支部行事、本部行事などを調整し、行事の重複を避けるなど効率化をはかる
5. 社会貢献
- 現在最も重要な環境問題を中心に産・学・官の連携を、和文誌、シンポジウム開催などを通じてはかる
- 中高生をはじめ市民への教育、宣伝活動のあり方について検討する
6. 将来体制
- 若手、女性の学会活動への参加を助成する
- 若手代表を理事会などへオブザーバー参加させる
- 理事会等の議論を積極的に公開する
- 教育委員会のミッションを確認し、大学・企業における人材育成のあり方を探る
- 人材育成を産学連携の一部ととらえ、学会としての取り組み体制を構築する
7. 事務局
- 職務イメージを構築する
- 人事考課基準をつくる