2024年 若手会夏のセミナー 富良野 開催報告
2024年度の生物工学若手研究者の集い(若手会)夏のセミナーは、7月13日(土)〜7月14日(日)に、北海道富良野市・ハイランドふらのにて開催しました。おかげさまをもちまして全国から89名(一般43名、学生46名)に御参加をいただき、3件の招待講演、53件のポスター発表、4件の企業セミナー、23件のキャリアパスに関するワークショップおよびグループワークを行いました。
【初日】
セミナー開始前に中富良野町のワイナリー”DOMAINE RAISON”に集い、ワイナリー見学とともに顔合わせを行いました。ぶどう畑やワイン製造工程の説明をしていただきました。また、ワインの試飲会では、世にも珍しいオレンジ色のワインや、非常に糖度が高いデザートワインなど、豊富な種類のワインを試飲することができ、緊張感を和らげてセミナーのスタートを迎えられました。
開会式
若手会会長の蟹江先生(近畿大学)から開会のご挨拶いただきました。
引き続き、実行委員長の佐藤より謝辞および本セミナーの趣旨説明を致しました。
企業セミナー
初日・2日目の企業セミナーでは、各日2名の方にご講演いただきました。研究内容だけではなく、ご自身のキャリアの中で体験した、他ではなかなか聞けない貴重なお話をしていただきました。
企業セミナー1
『島津製作所質量分析装置最新情報 〜新製品三役そろい踏み〜』
谷口百優 様(株式会社島津製作所)
谷口様には、最新の分析装置のご紹介とともに、自身の経験をもとにした若手研究者のキャリアパスについて講演していただきました。日々の研究で実際に島津製作所の分析装置を使用されている方が会場にも多くいらっしゃり、新鮮で参考になるお話だったのではないしょうか。
企業セミナー2
『千代田化工建設株式会社紹介、バイオ分野での技術開発の取り組み』
田畑 一巌 様(千代田化工建設株式会社)
微生物や植物を利用した生産プロセスにおいて、アカデミアで得られたラボスケールの研究をスケールアップして社会実装するための支援を実施されていることを中心にご発表いただきました。生物工学会と親和性の高い取り組みで、共同研究の発展などが期待できそうに感じました。
招待講演
講演会では、北海道に相応しい3名の方に招待講演を行っていただきました。北海道という土地ならではの「研究」と「キャリア」、そして「情熱」について知ることができ、多くの聴講者にとって新鮮なお話しだったのではないでしょうか。
招待講演1『雪と氷の世界に生きる微生物たちの謎に迫る-南極・北極・高山での経験から-』
中井亮佑 先生(産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門)
極限フィールドで暮らす生物の研究成果とともに、極限フィールドでの活動の大変さ、新しい発見の面白さについてご説明いただきました。発表では「南極コケ坊主」と「阿寒湖のマリモ」に関する内容が取り上げられ、それぞれの生物と共生する微生物のユニークさに驚かされました。まだまだ新規性の高い微生物が発見できるだろうという期待感でワクワクが止まりませんでした。これからの研究の発展に期待したいと思います。
招待講演2『ビール会社の育種家が語る、作物および天然素材としてのホップの面白さ』
鯉江弘一朗 先生(サッポロビール株式会社 原料開発研究所)
サッポロビール株式会社の原料開発研究所で原料の研究・生産に関わってきた鯉江先生にご講演いただきました。今回の発表では、「ホップ」に焦点を当て、サッポロビールが誇る品種特異性や栽培技術の紹介、そしてその中で誕生した「ソラチエース」や「フラノマジカル」という日本を代表するホップ品種の誕生秘話などをご講演いただきました。質疑応答では普段聞くことができないビール原料生産者の視点を知ることができました。
53件のポスター発表が実施されました。各ポスター前で激しい議論が飛び交い、濃密な時間を過ごすことができました。
夕食
ホタテやサーモン等の刺身や、蟹、デザートには富良野メロンを食べて、英気を養いました。
懇親会
招待講演3『クラフトビールの大地、北海道』
坂巻紀久雄 先生(Maltheads 店主/ビアジャーナリスト/ビア検 1 級)
懇親会の冒頭に、「日本ビール検定1級」や「ビアテイスター」などの資格を持つ坂巻先生にクラフトビールの歴史や飲み方についてご講演していただきました。特に聴講した先生方からは大きな歓声が湧き、学生も目を輝かせて話を拝聴しておりました。クラフトビールの歴史と飲み方を理解したうえで飲んだサッポロビールの「ソラチエース」は格別でした。
懇親会の中では、「未来の教員と学生の絆を築く:コミュニケーションとネットワーキングの新戦略」というタイトルのもと、研究者同士のネットワーキングをいかにして加速させるかについて議論が行われました。各テーブルでの闊達な議論を通じて、実際に現場で役立つ多くのヒントや解決策が見つかったのではないでしょうか。
ポスター発表の投票結果から各ポスター賞が授与されました。
最優秀賞(全員対象)
P. 19 内田和希:九州大学 大学院工学府
優秀賞(博士課程以下の学生対象)
P. 10 富士航至:北海道大学
P. 11 谷口赳夫:大阪大学
P. 20 上田帆高:北海道大学
P. 21 村山拳午:山梨大学
P. 30 高橋美郁:大阪公立大学
P. 33 中倉稜也:北見工業大学
P. 38 田中友樹:関西大学
P. 42 古閑友紀:九州大学大学院
P. 47 小坂唯心:京都大学
P. 48 佐々木守:北海道大学
敢闘賞(修士課程以下の学生対象)
P. 5 二ツ橋龍:名古屋大学
P. 26 岡澤空汰:北見工業大学
P. 40 井上義文:大阪公立大学
P. 52 伊関叶互:北海道大学
受賞者の皆様、おめでとうございます。
2日目
委員会企画
実行委員の黒田恭平先生による挨拶の後、「若者のキャリアを導くベテランの心得:経験から学ぶ新たな自分」というテーマで、23名のアカデミア・企業の”ベテラン”社会人によるポスター発表を行いました。内容としては、研究とキャリアパスをキーワードに闊達な議論が行われ、学生とベテランが見事に融合した素晴らしい会になりました。学生からは「今後も開催してほしい」「ベテランの経験値ってすごい」などの意見が多く、ベテランからは「学生のマインドが知れて新しい発見があった」「学生と深い議論ができ今後の研究生活にも役立つ」などのポジティブな意見が目立ちました。
企業セミナー
企業セミナー3
『PreSens社の酵素計、アプリケーションの紹介』
濱谷 渉 様(三洋貿易株式会社)
非破壊式で非接触式の酸素計をご紹介いただきました。フラスコやディッシュに小さなセンサーチップをつけて外部から酸素濃度を測定することができる様子を動画でも見せていただきました。酸素量のモニタリングは細胞や微生物の代謝測定において、よく必要になる実験系であり、非常に魅力的な製品をご紹介いただきました。
企業セミナー4
『微生物試験受託サービス テクノスルガ・ラボについて』
吉田 雄一 様(株式会社テクノスルガ・ラボ)
MALDI TOF-MSでの微生物の同定、微生物群衆構造解析、新種提唱のための生理・生化学的性状解析、保存アンプル作製や保管管理といった、分類学的研究に必要な幅広い受託解析についてご紹介いただきました。また、分析を担当する社員の方々の経歴や成果に加えて、研究への思いについてご紹介いただき、アットホームで情熱的な社風を感じました。
学生企画『コロナを経た今、人材ネットワークを加速させるには?』
初めての試みとして行われた学生実行委員による企画では、学生実行委員が考えたテーマでポストイットディスカッションが行われました。開会の挨拶は学生実行委員の山田あずささんが担当し、参加者は9つのテーブルに分かれ、「研究室内での人間関係がうまく築けず孤立感を感じている」と「初めての学会参加で交流の方法が分からず疎外感を感じる」という2つのテーマについて話し合いました。
各テーブルでは、学生委員が選抜したファシリテーターを中心に活発な議論が行われ、1分間の発表では独創的かつ斬新なアイデアが次々と紹介されました。これにより、ネットワーク構築の加速にふさわしい企画となりました。
さらに、それぞれのテーマで優秀な発表を行った3チームには、学生実行委員から表彰が行われました。敢闘賞のチームには「学生企画優秀アイデア賞」が、最も素晴らしい発表を行ったチームには「学生企画最優秀アイデア賞」が贈られ、それぞれのチームには景品も贈呈されました。
最優秀アイデア賞
吉田雄一:株式会社テクノスルガ・ラボ
渡辺淳:株式会社島津製作所
佐々木守:北海道大学
中倉稜也:北見工業大学
濵嶋梨紅:名城大学
長谷彩沙:九州大学
谷口赳夫:大阪大学
扇谷昌宏:旭川医科大学
濱本晋吾:エーエムアール株式会社
上田帆高:北海道大学
富士航至:北海道大学
釣上竜河:三重大学
梅原嘉宏:筑波大学
一色理乃:産業技術総合研究所
武輪能明:旭川医科大学
曽宮正晴:大阪大学
敢闘賞
立上陽平:味の素株式会社/希JAPAN株式会社
髙橋佑太:北海道大学
小林純怜:東京大学
内田和希:九州大学
三吉健太:大阪大学
TAN PEI YU :北見工業大学
黒田恭平:産業技術総合研究所
田島誉久:広島大学
井上雄介:旭川医科大学
閉会式
次回夏のセミナー実行委員長の中谷先生(九州大学)から、ご挨拶をいただきました。
最後に佐藤実行委員長からお礼を申し上げ、閉会とさせていただきました。
閉会後、ラベンダー畑で集合写真を撮影しました。
本セミナーをご支援いただきました日本生物工学会(本部、北日本支部)、テルモ生命科学振興財団、中辻創智社、加藤記念バイオサイエンス振興財団、サントリー生命科学財団、ご協賛・ご寄附を頂きました多数の企業様に深く御礼申し上げます。また、ご多忙の中、講演をお引き受けくださいました講師の先生方、会場のお世話をしてくださいましたハイランドふらののスタッフの皆様、本セミナー開催の機会をくださりサポートくださいました若手会役員の先生方に心より感謝申し上げます。そして、全国よりお集まりいただきました参加者の皆様、誠にありがとうございました。本セミナーをきっかけに、皆様の交流の輪がさらに広がることを祈念しております。
来年も九州での夏のセミナーにてお会いしたいと思います。
生物工学若手研究者の集い夏のセミナー2024 実行委員一同 (五十音順)
生田 宗一郎
一色 理乃(産総研・生物プロセス)
扇谷 昌宏(旭川医科大・医・解剖)
菊川 寛史(北海道大・工・応用化学)
黒田 恭平(産総研・生物プロセス)
兒島 孝明(名城大・農・生物資源)
佐藤 康史(旭川医科大・先進医工学研究センター 実行委員長)
鈴木 琢磨(大阪大・生物工学国際交流センター)
高野 力(北海道大・工・環境循環)
辻 雅晴(旭川高専・物質化学工学)
蜂須賀 真一(北海道大・工・応用化学)
堀之内 貴明(産総研・人工知能)
【学生実行委員】
小坂 唯心(京都大・農・D3)
篠田 あかり(九州大・生物資源(現:ハンス・クノール研究所、マックス・プランク進
化人類学研究所))
橋本 真悟(岡山大・医歯薬・D4)
村山 拳午(山梨大・医工農・D5)
山田 あずさ(九州大・生物資源(現:九大農PD))