第1回学際的脂質創生研究部会講演会 – 講演要旨
「学際的脂質創生へ向けた微生物機能の活用」
○小川 順1・櫻谷英治1・岸野重信1・安藤晃規2・清水 昌1,3
(1京大院・農、2京大・微生物科学、3京都学園大・バイオ環境)13:00~
○○工学の中において、水に溶けない対象の物性からslow starterであった脂質工学も、近年の進展により、様々な素材を産業レベルで提供できるまでに成熟してきた。今後、さらに新規な脂質を創出・提供するためにも、発酵工学(微生物油脂など)、酵素工学(リパーゼなど)に加え、栄養学、メタボローム、物性評価、有機合成などを巻き込んだ学際的取組みが求められる。本講演では、この学際的枠組みに対して多彩な脂質素材を供給する立場から、脂肪酸分子種の多様性を創出する微生物機能を紹介する。
「脂質メタボロミクスに資する超臨界流体利用技術の開発」
馬場 健史(大阪大学大学院工学研究科)13:25~
気体と液体の両方の性質を有するユニークな超臨界流体を代謝物解析に効果的に適用することを目的として,種々の超臨界流体利用技術の開発を試みている.本講演では,疎水性の代謝物を高解像度で分離可能な超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)や易酸化物など変化を受けやすい代謝物をインタクトの状態で抽出可能な超臨界流体抽出(SFE)のメタボロミクスにおける適用技術の開発について,実サンプルへの応用例も示しながら紹介する。
「中鎖脂肪酸の新機能」
寺田 新(日清オイリオグループ・中央研究所)13:50~
中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸に比べ、消化吸収されやすく、かつ容易にβ酸化を受けるという特徴を有することから、体脂肪が蓄積しにくい油脂として知られている。我々は現在、中鎖脂肪酸の新たな機能、特にタンパク質代謝に及ぼす影響についての検討を進めている。本講演では、動物およびヒト試験で得られた我々の最近の研究結果を紹介する。
「高度不飽和脂肪酸結合リン脂質の製法開発」
田中 立志(カネカ食品・事業部)14:25~
DHAなどの高度不飽和脂肪酸が結合したリン脂質はトリグリセリド型よりも機能性が高く、養殖魚飼料や機能性食品として注目されている。高度不飽和脂肪酸結合リン脂質は魚卵やイカミールなどから得られるが高価なため、安価で安定供給可能な製造方法が期待されている。今回、食品利用可能な原料を用いた高度不飽和脂肪酸結合リン脂質の製造方法と、今後の展開及び可能性について紹介する。
「油脂の機能性とメタボリックシンドロームの予防・改善」
永尾 晃治(佐賀大学農学部生命機能科学科)14:50~
メタボリックシンドロームは、肥満を中心病態として、虚血性心疾患の様々な危険因子が集積する状態を示し、人口の高齢化が急速に加速する中にあって、その罹患率の増加が医学領域のみならず社会経済的にも重大な問題となっている。講演では、メタボリックシンドロームの予防・改善におけるCLA・ n-3PUFA・リン脂質などといった機能性脂質活用の有効性とその作用機序について、病態モデル動物を用いた研究例を紹介する。
「海洋性カロテノイドの機能探索」
細川 雅史(北海道大学大学院水産科学研究院)15:15~
海洋生物がもつカロテノイドの中には、陸上生物とは異なるユニークな構造をしたものが多く存在する。演者は、これまでに海洋性カロテノイドの健康機能に着目し、抗肥満作用や抗糖尿病作用、抗炎症作用、癌細胞に対するアポトーシス誘導能など種々の機能性を評価してきた。本講演では、カロテノイドを含む海洋生物と演者らの見出した健康機能について紹介する。