第72回日本生物工学会大会(2020)で企画されていたシンポジウムのうち、13のシンポジウムを2020年9月2日(水)と3日(木)にWebにて開催しました。⇒詳しくはこちら

1.再構成的アプローチによる生物システムの理解と工学的活用

  • オーガナイザー:田端 和仁(東大)・後藤 祐樹(東大)

生物が持つ階層的なシステム(分子、細胞内、細胞間、組織、固体)を理解するには、単に調べるのみならずシステムを作って再現するという再構成的なアプローチが重要になってくる。本シンポジウムでは分子システムから多細胞システムを再構成して理解する方法の開発や研究、利用を行っている研究者を中心に講演を行う。

 

2.タンパク質の新世界:科学からたどり着いた工学・創薬

  • オーガナイザー:梅津 光央(東北大)

タンパク質工学が提唱されてから30年以上経た現在、2018年に進化分子工学がノーベル化学賞を取るに至り、医薬分野においても抗体を代表とするタンパク質が構造フォーマットの主流になりつつある。その中で、構造解析ではクライオ電顕が登場し、創薬では日本でも様々なベンチャーが立ち上がっている。本シンポジウムでは、構造解析技術から創薬までを含めたタンパク質工学の観点からの最先端の取り組みを紹介するとともに、今後の展望について広く議論する。

 

3.あなたの研究、世に出しませんか~基礎研究⇔事業化を互いの視点から考える~

  • オーガナイザー:圍 彰吾(白鶴酒造)・岡野 憲司(阪大)

大学や研究機関、企業のいずれの研究開発においても、事業化を通じた社会還元が最終目的の一つと言える。しかしながら大学の研究においては、基礎研究を事業化へ応用する機会が常にあるとは言えず、逆に企業側は事業化へ繋がる基礎研究を見つけ出せないことがある。そこで我々は基礎研究の事業化について、聴講者に産と官学の双方の視点から考えるきっかけを提供することで、少しでもミスマッチを解消し、日本の産官学の相互発展を促したいと考えている。

以上の目的から本シンポジウムでは、基礎研究が事業化につながった実例について、産と官学の演者お二人をペアとし、連続して講演してもらう。特に、連携のきっかけや事業化への要点(どのように両者の考え方を融合したか、ほか苦労話など)、今後の展望に焦点を当ててもらう。また、オープンイノベーションを起こすための取り組みについて、メーカーとコンサルタント企業を招いて第三者の視点から講演してもらう予定である。

共催:関西支部若手企画委員会
 

4.細菌ベシクルと合成リポソームが紡ぐ膜小胞研究のフロンティア

  • オーガナイザー:田代 陽介(静岡大)・尾島 由紘(阪市大)

多くの細菌は膜小胞(ベシクル)を形成しており、ワクチン等への応用が期待されている。しかし、生物由来の夾雑物を含んだ微粒子であるがゆえにその形成機構や機能について未知な部分が多く、その応用も発展途上である。一方、生体膜を模倣し合成したリポソームの研究例はこれまでに多く、ドラッグデリバリーシステム・酵素の媒体としての応用や人工細胞の創成に向け研究されてきた。本シンポジウムでは、細菌ベシクル研究者と合成リポソーム研究者が一同に会して最新の研究成果を紹介し、膜小胞の新たな応用の可能性を含めて今後の展望を議論する。

 

5.微生物由来バイオポリマーの機能性と生合成及びその革新的応用利用研究の最前線

  • オーガナイザー:濱野 吉十(福井県大)・山中 一也(関西大)

微生物は、糖、アミノ酸、脂肪酸、イソプレンなどを構成残基とする多様なバイオポリマーを生産する。それらの多くは化学合成ポリマーにはない機能性と生分解性を備えていることから、幅広い産業分野での応用利用が期待されている。また近年、それらの機能性及び生合成研究は急速な深化を遂げており、合成生物学的アプローチによる擬天然機能性ポリマーの創生も可能になりつつある。本シンポジウムでは、こうした最前線の研究成果を「科研費新学術領域・生合成リデザイン」との共催により産業界へ提供する。

共催:科研費新学術領域研究・生合成リデザイン

 

6.理学・工学分野から若手主導で考える酵母研究の未来

  • オーガナイザー:三浦 夏子(阪府大)・ 堀之内 貴明(理研)

酵母は生物工学研究における代表的な生物種の一つとして、酒類の醸造のみならず生命科学における基礎的知見の蓄積や物質生産への貢献に至るまで、幅広い領域の進展に貢献してきた。本企画では理学・工学分野の若手酵母研究者が集い、講演と聴衆参加型の議論を通じて各々の視点から多彩な酵母の魅力を伝えるとともに、理学・工学分野における酵母研究の接点と今後の展開を探っていく。聴衆参加型の全体討論を通じて生み出される、新たな「面白い」視点を生物工学分野に活かす原動力とし、若手研究者による新たな酵母研究の潮流が創出されることを願う。

 

7.未来型養殖のためのバイオテクノロジープラットフォームの構築 

  • オーガナイザー:堀 克敏(名大)

動物性蛋白質としての魚介類の需要が増加する一方で、乱獲による水産資源の枯渇が問題になる中、養殖に期待が集まっている。しかし、天然資源に頼る飼料や抗生物質投与など、従来型の養殖にも問題がある。本シンポジウムでは、抗生物質に頼らない魚病対策、非天然資源飼料の開発、バイオマスの飼料・エネルギー利用、ゲノム編集による育種、生物学的水質浄化技術など、低環境負荷の持続的な未来型養殖のための生物工学プラットフォームについて発信、議論、展望する。

 

8.非線形バイオシステム研究の現状と展望

  • オーガナイザー:田丸 浩(三重大)・ 梅津 光央(東北大)

バイオと材料が織りなす新しい融合マテリアルやバイオデバイスの開発には、融合界面を設計・制御することが重要となる。単に材料表面を修飾してタンパク質を固定化する様な従来技術から脱却し、生体分子認識反応を効率的に行わせる様な画期的な界面制御技術を進展させなければならない。本シンポジウムでは、タンパク質と材料界面、無機結晶界面、ナノマテリアル等との相互作用の本質を探り、新しいバイオ無機ハイブリッド材料の創生も目指して議論する。

共催:バイオインターフェイス研究部会

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9.「ゲノム合成」という方法論の秘めた可能性を考える

  • オーガナイザー:高木 博史(奈良先端大)・相澤 康則(東工大)

「ゲノム工学」の進歩はめざましく、現在日本では「ゲノム編集」ブームの真っ只中であるが、世界ではその先の「ゲノム合成」が始まっている。2010年に発表されたマイコプラズマ属細菌ゲノム全合成の後、しばらく沈黙は続いたが、2019年になって韓国と英国から大腸菌ゲノムの全合成が報告され、方法論としてのゲノム合成の汎用性が急激に高まっている。本シンポジウムでは、最新の研究成果と社会動向を紹介し、産業への応用を含む今後の展望を議論したい。

 

10.醸造技術の新展開 ―原料~醸造のこれから―【本部企画】

  • オーガナイザー:明石 貴裕(白鶴酒造)・秦 洋二(月桂冠)・赤尾 健(酒類総研)

これまでの醸造技術開発は品質、生産面の向上が主であり、香味成分の生成機序解明、有用微生物育種など、醸造工程の研究が活発であった。最近では科学技術の進歩により、醸造研究分野はさらに広がり、原料自体にも目が向けられている。また、商品性の向上として原料、産地へのこだわりが注目されており、地域性を訴求した取り組みも進められている。本シンポジウムでは、これからの醸造の新たな方向性となる取り組みを紹介したい。

 

11.食のおいしさの計測科学の現状と課題【本部企画】

  • オーガナイザー:安原 貴臣(アサヒビール)・児島 宏之(味の素)
            今井 泰彦(野田産研)・林 圭(三和酒類) 

おいしさの技術は、消費者が食品を視認し実際に手に取り、摂取し、満足感を得るまでの一連のプロセスの成立まで幅広い議論がされている。そこでは、5感全てが考慮されており、生物工学や神経生理学等の自然科学的アプローチだけでなく認知科学や行動経済学等の社会科学的アプローチからも議論されるなど、食品産業にも大きな流れが生じている。こうした背景を受け、おいしさの科学領域における産官学の第一人者をお招きし、現状と課題について議論をし、その認識を深め、日本の食文化と食品産業の発展への一助としたい。

 

12.日本のバイオ戦略2020に生物工学はどのように関われるか【本部企画】

  • オーガナイザー:安原 貴臣(アサヒビール)・髙木 忍(合同酒精)
            岡 賀根雄(サントリーホールディングス)・今井 泰彦(野田産研)  

地球社会の持続的な発展のために、SDGsやパリ協定など地球規模の課題を解決するための共通目標が合意されて数々の取組が進められている。これに関連して、日本国内では政府主導でバイオ戦略2019(バイオ戦略2020として更新中)が策定され、産学官を挙げた取組が始まろうとしている。そこで昨年度に引き続き、バイオ戦略の概要、市場への展開、学会に対して求められていること、など幾つかの視点から専門家に講演して頂き、共有化することで、産官学会員のそれぞれの活動や、新たに産学官連携を始めるきっかけとしたい。

共催:一般財団法人 バイオインダストリー協会(JBA)
 

13.健康長寿社会実現のkey臓器・骨格筋を取り巻く研究潮流と培養・評価技術の寄与

  • オーガナイザー:長森 英二(大阪工大)・井藤 彰(名大)・清水 一憲(名大)

骨格筋は近年、生体における動力源としてだけでなく、生体内代謝の主を担う重要臓器として認識されるようになり、健康長寿社会の実現に向けた予防医療/創薬の魅力的なターゲットとして注目を集める。当学会でも骨格筋細胞を組織化/培養するに留まらず、機能的に評価するシステムが急激に整備され、創薬や機能性食品評価に活用され始めている。培養食肉やバイオアクチュエータなどSDGsに向けた展開も期待される。骨格筋研究の最新の潮流、技術的動向を紹介したい。

共催:骨格筋スマート社会実現コンソーシアム
   次世代アニマルセルインダストリー研究部会

 

14.植物によるバイオ生産フロンティア

  • オーガナイザー:岡澤 敦司(阪府大)・ 村中 俊哉(阪大)・田口 悟朗(信州大)

COP25が開催され、低炭素社会構築の必要性がこれまで以上に認知されるところとなった。太陽エネルギーを利用し二酸化炭素を固定する植物によるバイオ生産は、低炭素社会における産業基盤となり得る。本シンポジウムでは、ゲノム情報およびゲノム編集技術の加速的な発展によって、スマートセルインダストリーにおける植物の利用に大きな期待がかけられている状況や、植物バイオの実用化事例を紹介し、SDGsの達成に向けた展望を議論する。

協賛:日本植物バイオテクノロジー学会
共催:次世代植物バイオ研究部会
 

15.東南アジア諸国における我が国の生物工学技術の展開《国際シンポジウム》

  • オーガナイザー:原 啓文(マレーシア日本国際工科院)・新谷 政己(静岡大)
            金原 和秀(静岡大)

地球規模の持続可能な社会の構築には、東南アジア諸国が抱える大量の未利用バイオマス資源の活用問題や、当該諸国の発展に伴う廃水・廃棄物処理問題の解決が極めて重要である。そのためには、地理的に近い我が国のもつ醗酵生産技術や環境浄化技術を導入することが不可欠である。他方こうした熱帯地方には、未知の有用微生物が数多く生息することも明らかになりつつある。本シンポジウムでは、東南アジアにおける生物工学技術展開の実例と共に、学術的な新知見を提供し議論する。

 共催:NPO法人環境バイオテクノロジー学会

 

16.酵母細胞内における最大の貯蔵庫「液胞」が果たす機能の多様性とその応用展開について

  • オーガナイザー:金井 宗良(酒類総研)・水沼 正樹(広島大)・渡辺 大輔(京大)

細胞内で独特な空間を有する巨大なオルガネラである液胞は、一昔前は「代謝活性が低く、単なる細胞の“ごみため”である」とされてきたが、現代では、細胞内での解毒作用、自食作用や、アミノ酸、無機イオン・有機酸・糖類・液胞貯蔵タンパク質・プロテアーゼ等の貯蔵庫、として様々な機能が知られている。本シンポジウムでは、酵母における液胞が有する多機能性や機能性成分高蓄積機構に関する最新の研究成果を紹介し、産業への応用を含む今後の展望を議論したい。

 

17.ボトムアップ生物工学

  • オーガナイザー:本田 孝祐(阪大)・石川 聖人(名大)

種々の生体分子を組みあわせ、生物機能の一部(究極的にはそのすべて)の再構築を目指すボトムアップ生物学は、生物を「つくって調べる」ユニークな学問分野として広く認知されている(Nature 563, 171 (2018))。一方、近年では、生体分子群の自由な組みあわせにより、天然には存在しない生物機能を創り出し、これらを物質生産や環境モニタリング等に応用しようという試みも活発化している。本シンポジウムでは、こうした新たな学術・技術体系(ボトムアップ生物工学)の開拓に挑む若手研究者に焦点を当て、その最新の成果を紹介いただく。
 

18.高分子材料と動物細胞培養の融合研究~Material Scienceによる細胞挙動制御~

  • オーガナイザー:蟹江 慧(名大)・岩井 良輔(岡山理大)・堀江 正信(京大)

20世紀初頭に動物細胞の培養が可能となって以降、動物細胞を用いた様々な研究が世の中に広がっている。しかし、100年以上たった現在でも、動物細胞に関して未解明な部分は非常に多く、動物細胞を用いた産業も未だ開拓・発展途上である。その原因として、一研究領域だけでは動物細胞の解明や理解、さらには挙動を制御することは困難であることが考えられる。動物細胞の制御こそが今後の産業化に繋がっていくと考えられるため、動物細胞培養研究においても、異分野融合がますます重要であり必須であるとも言える。
そこで、本シンポジウムでは動物細胞培養と材料科学領域の融合研究に取り組まれている研究者に講演頂き、材料科学の観点から動物細胞挙動の制御をいかにして行うかを議論する。

共催:次世代アニマルセルインダストリー研究部会

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19.アジア若手リーダーによる微生物学の国際展開《国際シンポジウム》

  • オーガナイザー:古賀 雄一(阪大)・金井 保(京大)

次世代シーケンスや、IT技術の進展により、微生物資源の価値が見直されつつある。アジア各国(インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイ)で次世代リーダーとして活躍する微生物学分野の研究者を招き、アジア地域の特徴ある微生物資源としてのカルチャーコレクションの動向、国際連携、人材教育についての課題を共有し、生物工学会でできる国際的な活動について考える。

共催:日本生物工学会関西支部
 

20.大学ブランドのお酒造りから学ぶ発酵醸造学

  • オーガナイザー:榊原 陽一(宮崎大) ・小林 元太(佐賀大)

大学が法人化の後、地域連携、産学連携、さらに大学の広報や宣伝活動の目的で大学ブランドを関した産物が多数開発されている。その中でも、大学ブランドを冠したお酒(日本酒、本格焼酎、ワインなど)が多くの大学で作られている。大学においては、学生の実習などを活用した教育プログラムとしての取り組みや、地域の酒造メーカーとの連携により手探りで対応している所も多い。そのため、大学ブランド酒造りから発酵醸造学をいかに学び、次世代の人材養成につなぐことができるのか、本シンポジウムで取り上げたいと思う。

共催:生物工学若手研究者の集い(若手会)
 

21.バイオ分析と合成生物学の接点を求めて

  • オーガナイザー:上田 宏(東工大)・座古 保(愛媛大)・神谷 典穂(九大)

昨今の生物工学分野においては、あらゆる生物情報の定量的理解を目指す分析的アプローチが著しい進歩を示す一方、得られた情報を単純化し、生物プロセスの本質に迫る合成生物学的アプローチの発展も目覚ましい。本シンポジウムにおいては、このような二つのアプローチの融合から新分野の創出をを目指した研究開発をされている演者の方々にお話し頂く。

 

22.新研究領域『生物鉱学』の幕開け~ミネラリゼーション、リーチング、コロージョンの統合的理解と応用

  • オーガナイザー:若井 暁(海洋研究開発機構)

微生物と無機物の相互作用に関する研究としてbio-minelarization、bioleaching、biocorrosionなどがある。我々は、これらを網羅する『生物鉱学』という学問分野を立ち上げ、微生物学および鉱床学の研究者らが手を取り合って微生物作用と鉱床の生成・保存との関連を明らかにし、その過程における様々な現象を応用研究に繋げることを目指している。多くの関連研究者が在籍する本学会において、世界に先駆けて『生物鉱学』の立ち上げを発信したい。
 

23. タンパク質生産の実用化に向けた産学官の挑戦

  • オーガナイザー:五味 勝也(東北大)・尾崎 克也(バイオインダストリー協会)

遺伝子工学や育種工学により有用タンパク質の効率的生産が期待されているものの、未だ実用化に至っている例は少ないのも現状である。そのような状況の中で本シンポジウムでは、企業において実用化に近い、または実用化されつつあるタンパク質生産の実例とともに、大学や国研で行われているタンパク質生産効率の向上に向けた技術開発研究の最前線について報告してもらう。

共催:バイオインダストリー協会・新資源生物変換研究会

 

24. バイオポリマー百花繚乱:合成メカニズムから産業化まで

  • オーガナイザー:田口 精一(東農大)・ 佐藤 俊輔(カネカ)

バイオエコノミーやSDGsに寄与する取り組みの一例として、バイオポリマーの創製をテーマとする。バイオポリマーはバイオマス利用で低炭素化に資すること、生分解性で環境汚染低減に貢献することが求められている。本シンポジウムでは、ポリエステル、セルロース、ポリオール、ゴム、芳香族バイオポリマーを取り揃え、それらの合成メカニズムから産業化まで、「生物工学×高分子化学=新ポリマー素材の創発」の視点から議論する。

後援:科学技術研究機構(JST)

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