生物工学会誌 第97巻 第6号
和文誌編集委員長 岡澤 敦司

この度、生物工学会誌編集委員長を拝命いたしました大阪府立大学大学院生命環境科学研究科の岡澤敦司です。就任にあたり、会員の皆様にご挨拶申し上げます。

期せずして、新元号への切り替わりという歴史の節目に、伝統ある生物工学会誌(以降、和文誌と記します)の編集委員長を任せられることになり、大変名誉に思うとともに、一層の重責を感じております。任を与えていただいた前執行部役員の先生方に、まずは心よりお礼申し上げます。

私は、園元謙二先生が編集委員長を務められていた時に和文誌編集委員に加えていただき、幸運にも木野邦器先生、藤原伸介先生という3名の編集委員長の先生方と和文誌の編集に携わることができました。園元先生は、学会誌として、「学問情報の伝達」「学会活動の伝達」および「会員の相互交流」を使命に掲げられ、木野先生は、さらに「産学連携の強化や民間研究の発信」にご尽力され、前任の藤原先生は、それまでの方針を継承しつつ、「会員が欲する情報の発信」という視点での編集に努められました。その甲斐もあり、「特集」「バイオミディア」ならびに「生物工学基礎講座―バイオよもやま話―(現在は続編として継続中)」といった、和文誌の基幹といえる記事のダウンロード件数は、依然右肩上がりとなっています。また、「プロジェクト・バイオ」「生物材料インデックス」「バイオ系のキャリアデザイン」ならびに期間限定連載のバイオインフォマティクスや統計解析に関する講座なども、他に類を見ない、あるいは、他に先駆けて取り組んだユニークな記事として、大変好評を得ております。これもひとえに、編集委員、バイオミディア委員、ならびに、支部編集委員の皆様と執筆者の先生方、事務局の連携の賜物であり、ひいては、学会誌に期待を寄せていただいている学会員のご支援によるものと感謝しております。新体制においても、これまでの編集委員会の基本方針を踏まえ、より魅力的な誌面作りを進める所存です。

平成は、科学技術という側面では大変な飛躍を遂げた時代であり、特にバイオ関連の技術革新には目を見張るものがありました。和文誌においても、時流に乗った先端のバイオ技術を「特集」や「バイオミディア」で積極的に発信することができました。一方、社会に目を向けると、度重なる自然災害や、宗教あるいは政治的な対立が激化し、あらゆる分断が生じた時代でもあり、科学技術の進展が世界平和につながると信じる楽観主義者にとっては、試練の時であったかもしれません。令和への切り替わりを一つの機会として、和文誌から発信する科学技術について、あるいは、科学者や科学そのものについて、社会との関係を改めて根本的に考えてみる必要があると感じています。醸造、醗酵から連綿と続くバイオテクノロジーを、どのように社会に受容また活用してもらえるかについて、特には哲学的にも考えなくてはいけない時代になりつつあると思っています。生物工学会は、数ある学術団体の中でもずば抜けて自由闊達な雰囲気をもち、若手からシニアまですべての年代層の活力に満ちている学会だと思います。和文誌が、学会員の皆様の多様なご意見を頂戴し、広く発信することで、学会内外での対話を促し、学会活動を社会に還元するための一端を担うことができないか模索したいと思います。

新体制では、長森英二先生(大阪工業大学工学部)に編集副委員長を務めていただきます。前期より継続していただく9名の委員に加え、4名の企業の方を含む8名の新任の委員の皆様、10名(内4名が新任)のバイオミディア委員の皆様、各支部編集委員の皆様、事務局の皆様とともに和文誌の編集を進めて参ります。ご存知のように、和文誌のほとんどの記事は、学会内外の執筆者からのご寄稿によっています。執行部、各支部、ならびに、若手の会を含む各研究部会とも連携を取りながら、充実した誌面作りを目指して参りますので、引き続き会員の皆様のご支援とご協力を賜わりますようお願い申し上げます。

 

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