【ご挨拶】会員が欲する情報の発信をめざして – 藤原 伸介
生物工学会誌 第91巻 第6号
和文誌編集員長 藤原 伸介
この度、生物工学会誌編集委員長を務めさせていただくことになりました関西学院大学理工学部の藤原伸介でございます。就任にあたり、会員の皆様にご挨拶申し上げたいと思います。
伝統ある日本生物工学会の学会誌(和文誌)の編集を担当させていただくことは大変光栄なことだと感じております。和文誌は新会長の園元謙二先生が編集委員長をされていたときに掲げられた三つの目標(学問情報の伝達、学会活動の伝達、会員の相互交流)を継承し、これまで活動を行って参りました。前任の木野邦器先生は民間の視点を重視され、産学連携や民間研究の紹介にもご尽力されました。日本の発酵産業の歴史にも注目され、特に90周年では、記念座談会(本年4月号掲載)を企画化され、黎明期の出来事を生物工学会の歴史を交えながら紹介されています。私は先生方の目標を継承しつつ、さらに「会員が欲する情報の発信」を意識して取り組みたいと考えております。
ご存知のように本学会は民間企業の研究者が会員の約4割を占め、民間企業、大学、あるいは公的研究機関の研究者が集うユニークな学術団体です。和文誌は、学生、教員に学問的価値の高い情報を発信するとともに、民間研究者が欲する情報も発信しなければならないと考えています。学生にとって企業が欲している情報を知ることは、将来の職業選択、キャリアデザインを考える上で大切なことです。また学生会員の方に知っておいていただきたい実験の原理、生化学の基礎なども生物工学基礎講座などを通じて提供して参ります。和文誌が世代を超え会員の皆様にとっての価値ある情報源になるよう務めて参りたいと思っております。
数年前から和文誌の内容もWEB上で公開され、パソコンや情報端末でもお読みいただけるようになっています。特にキーワード検索の機能が進歩したこともあり、冊子体ではなく情報端末の方が読まれているのではないかと感じます。中でも「生物工学基礎講座」「バイオミディア」はダウンロード件数も多く、補助教材としてもかなり活用されているのではないでしょうか。今年の4月号から新たに連載されている「科学者が知っておきたいビジュアルデザインの心得」も好評で、学会発表や学位論文発表などのパワーポイント作りに役立っているのではないかと思います。冊子体では表現できない写真やカラー図もWEBを通じた情報端末では可能です。これからは積極的にWEB媒体も意識し、「会員が欲する情報の伝達」を心がけて参りたいと考えております。
学会誌には大きく二つの使命があると考えております。一つはトレンドとなる学術性の高い情報を会員に知らせることです。和文誌には英文誌にはない親しみやすさがあると思いますが、バイオの最新トレンド、あるいはこれからトレンドになりそうなトピックスを日本語でわかりやすく提供して参りたいと考えています。もう一つは次世代を担う若手研究者の方に、忘れないでいただきたい情報の再発信です。最新の知見とともに、教科書から忘れ去られてしまいそうな内容も、継承すべき事柄は取り上げたいと思います。日本の発酵産業の中で産まれた技術、発酵工学を基礎として培われた先端技術も積極的にとりあげ、我が国の技術水準の高さを会員の皆様に再認識していただきたいと思っています。編集副委員長としては岡澤敦司先生(大阪府立大学 )にご尽力いただくことになっています。デザインセンス抜群の岡澤先生の力を借りて、視覚的にも訴えられる和文誌を目指したいと思います。新年度はこれまで和文誌の編集に携わられた多くの委員の方が去られました。同時に新しい委員の方が多数加わり、委員会全体も若返りしています。新しい力を活力として、他の学会誌に負けない内容の学会誌刊行が続けられるよう努力して参りたいと思います。
どうか会員の皆様のご指導とご鞭撻を、何卒よろしくお願い申し上げます。