【ご挨拶】JBBが今後も愛されるジャーナルとして発展し続けていくために – 井藤 彰
生物工学会誌 第101巻 第6号
英文誌編集委員長 井藤 彰
この度、英文誌編集委員長を拝命しました名古屋大学大学院工学研究科化学システム工学専攻の井藤彰です。就任にあたり、自己紹介方々、会員の皆様にご挨拶申し上げます。
私は1997年に名古屋大学工学部生物機能工学科の小林猛先生の研究室に配属され、機能性磁性ナノ粒子を用いた、がん温熱療法に関する研究に従事しました。当時、小林先生は日本生物工学会の会長を務めていらっしゃったので、当然、私も日本生物工学会に入会し、以来四半世紀が経過します。英文誌 ‘Journal ofBioscience and Bioengineering(JBB)’ への私の初めての投稿論文は2000年に掲載されました。それ以降、2004年、2008年、2014年とJBBの論文賞受賞論文に選んでいただき、これらの学術的成果は私のキャリア形成に大きく貢献しました。JBBに投稿して貴重な査読意見を頂戴するだけでなく、2001年に名古屋大学の助手となってからは、JBBへの投稿論文の査読を依頼されるようになりました。恩師である小林猛先生、本多裕之先生、上平正道先生から、学会誌であるJBBにおけるpeer reviewの厳しさと温かさについてご指導いただき、査読しながら多くのことを学びました。若い研究者には査読が多く回ってくるもので、自分が投稿した論文の数よりも圧倒的に多くの査読を依頼されると、他人の評価ばかりしているような卑屈な気持ちにもなりますが、ある日Elsevier から‘Top Reviewer’と書かれたボールペンが送られてきたことは、驚きとともに、ちょっとやる気が出たりしました。
2011年から2015年は、JBBの編集委員をお引き受けすることになり、髙木昌宏編集委員長にジャーナルの編集に関わる責務と意義についてご指導いただきました。特に、後半の二年間は副編集委員長として、編集委員長の仕事をサポートする貴重な機会を頂きました。若い頃から編集に携わる機会を与えるとともに、国際誌の副編集委員長を務めた実績をプロモーションに利用して欲しいという髙木先生のご厚意であり、大変感謝しております。編集委員であった当時、JBBのインパクトファクターを上げるための方策として、‘NOTES’として掲載されている論文の被引用回数が低いことからNOTESのカテゴリー廃止を提案しました。髙木編集委員長のご英断でNOTESは廃止されましたが、学生の学位取得のためにNOTESは残すべきだという意見に対して、「JBBは会員の駆け込み寺ではない」と仰った髙木先生のお言葉が心に残っています。
さて、直近4年間の英文誌編集作業は、神谷典穂編集委員長をはじめとする編集委員や事務局の方々の献身的なご尽力に支えられてきました。インパクトファクターも3を超え、JBBは日本、引いてはアジア圏のバイオテクノロジーを世界に発信する日本生物工学会のフラッグシップジャーナルとして益々発展し続けております。一方で、これからの10年は学術情報にとっての非常に大きな変革期であるといわれています。国などの研究資金提供機関の要請で、オープンアクセスのジャーナルが急増しており、学術の成果が社会へ広く公開されて誰もが利用できるようになるオープンサイエンスの一層の発展が見込まれています。こういったデジタルトランスフォーメーションが起こっている最中に、学会誌としてのJBBの未来をどのように描いていくか、編集委員長としての私の重責は非常に大きいのですが、その時代の渦中にあることは大きな挑戦であるとともに新たな学びの機会であると捉えています。今後4年間、編集委員および事務局の皆様と協働し、会員の皆様のご意見やご叱正を賜りながら、この変革期におけるJBBの在り方を考え、会員の皆様に愛され続けるJBBを目指していく所存です。会員の皆様にはご指導とご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
著者紹介 名古屋大学大学院工学研究科化学システム工学専攻(教授)