【随縁随意】アジア若手国際交流のすすめ-長棟 輝行
生物工学会誌 第95巻 第5号
長棟 輝行
若手会員、学生会員の皆様は、アジア生物工学連合(Asian Federation of Biotechnology: AFOB, www.afob.org)をご存知でしょうか。AFOBはアジア地域におけるバイオテクノロジー関連研究者の相互理解・交流を促進するために2008年10月に設立され、アジアの14か国/地域から13のバイオテクノロジー関連学会が加盟している学術組織です。AFOBは、Asian Congress on Biotechnology(ACB)を2 年ごとに、Young Asian Biological Engineers’ Community(YABEC)を毎年開催しています。また、欧州生物工学連合(EFB)と2014年7月末に交流協定を締結し、それぞれが主催する国際会議であるACBとECBでジョイントセッションを開催しています。
若手会員の中にはACBやYABECに参加された方もいるのではないでしょうか。AFOBには当学会をはじめとして日本化学会バイオテクノロジー部会、化学工学会バイオ部会、環境バイオテクノロジー学会、日本動物細胞工学会も加盟しています。現在、AFOBには約3900名が個人会員登録していますが、日本でのAFOBの認知度はまだ低く、個人会員登録数は190名と、韓国、インド、マレーシア、中国の約1060名、740名、550名、400名を大きく下回っています。アジアでバイオテクノロジー分野の教育・研究・産業を牽引してきた日本の将来を担う皆様のアクティビティーをアジアに向けて発信し、また、同世代の若手と交流し、切磋琢磨するために、AFOBの個人会員に登録をしてみてはいかがでしょうか。ちなみに、個人会員の会費は無料であり、AFOBが主催・共催する国際会議やセミナーの参加費割引やAFOBが編集する『Biotechnology Journal』特集号の無料閲覧などの特典があります。
当学会の若手会が主催する夏のセミナーは約50年の歴史を持っており、合宿形式で熱い議論を交わすことができる若手交流の場として大きな役割を果たしてきました。先輩や同輩の方々と午前・午後はセミナー、夕方は野球、夜は懇親会、さらに深夜まで相部屋の方々との熱い議論を通じて、多くの方々と交流を深め、知己を得ることができたことを懐かしく思い出します。AFOBのYABECはまさに若手会の夏のセミナーにあたる合宿で、2~3日間寝食を共にしながら研究発表会や懇親会などを通して、相互啓発や情報交換、密度の濃い個人ベースの国際交流を図ることを目的としています。YABECは23年前にシンガポールで開催されたアジア太平洋生物化学工学会議に参加していた韓国の若手研究者達から、お互いにもっと深く知り合う機会を作ろうという呼びかけに日本、中国、台湾の若手研究者有志が賛同して、翌年に発足しました。その後、毎年この4か国の持ち回りで開催され、現在はAFOB若手会の役割を担っています。私自身、YABECメンバーとの共同研究、国際会議の企画、大学間交流など、さまざまな場面で、YABECで培った人脈の重要性やその恩恵を実感しました。
学会ホームページ国際展開委員会のサイトに掲載されている「国際展開諮問委員会報告」の中で、当学会の「アジア戦略」として、アジアとの交流・共同研究を行う若手研究者の支援、学会間の連携を推進する若手の育成による新学術分野の開拓の重要性が指摘されています。生物工学若手会の夏のセミナーと同様に、YABECへの参加や運営に主体的にかかわることで、単に学会で会う“顔見知り”としてではなく、生涯を通じて付き合える“友人”としての交流が生まれ、豊かな人脈が培えると思います。アジアにおけるバイオテクノロジーの将来を担う若手会員、学生会員の皆さんに、アジア若手国際交流の場への積極的な参加をおすすめします。
著者紹介 東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻(教授)