生物生物工学会誌 第101巻 第3号
大政 健史

2022年10月から第6代目のAsian Federation of Biotechnology(AFOB)の会長を仰せつかっている。
AFOBは、2008年に発足したアジア各国を代表するバイオテクノロジー関連学会の連合体である。初代の会長は吉田敏臣先生で、私は日本からの2人目の会長となる。会長の下に、14か国(バングラデシュ、インド、インドネシア、日本、韓国、中国、マレーシア、モンゴル、ネパール、パキスタン、フィリピン、シンガポール、台湾、タイ、ベトナム)からの副会長を置き、Secretary Generalとして、韓国Inha大学のChoul Gyun Lee教授にご就任いただいている。学会の本部は韓国Incheon市に設けられているが、直接のRegional Branch Officeが、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、パキスタン、タイに設置され、約6000名の個人メンバーも登録されている。また、各国のバイオテクノロジー関連学会をInstitutional Member として受け入れており、日本生物工学会をはじめとして、日本からの計5学会を含む20学会が加盟している。AFOBは、European Federation of Biotechnology(EFB)と活発に交流しており、1年おきにEFB主催European Congress on Biotechnology(ECB)とAFOB主催Asian Congress on Biotechnology(ACB)で合同セッションが開催されている。

国際学会のACBは、AFOBのもっとも大きな活動の一つであり、その前身のAsia Pacific Biochemical Engineering Conference(APBioChEC)から引き継いで2022年はインドネシアにて15回目の開催となった。
ACB以外に各国で開催されるAFOB-Regional Symposium(ARS)も重要な活動である。ARSは毎年開催で、すでに12回目を迎えており、生物工学分野のアジア各国での活性化に貢献している。

さらにAFOBでは、Divisionでの活動を推進している。現在、(1)Agricultural and Food Biotechnology、(2)Applied Microbiology、(3)Biopharmaceutical and Medical Biotechnology、(4)Biocatalysis and Protein Engineering、(5)Bioprocess and Bioseparation Engineering、(6)Bioenergy and Biorefinery、(7)Environmental Biotechnology、(8)Marine Biotechnology、(9)Nanobiotechnology、(10)Biosensors and Biochips、(11)Systems and Synthetic Biotechnology、(12)Tissue Engineering and Biomaterials、(13)Bioindustry Promotion and Bioeducation(Formerly Bioeconomy and Biobusiness)の分野を設定し、各国から委員を出して、それぞれ活発に活動を行っている。

すでに27年も毎年実施されている日本・韓国・台湾・中国の50歳以下の若手の博士号をもつ研究者の集い、Young Asian Bioengineers’ Community(YABEC)の活動もAFOBの重要なミッションである。これに加えて、2022年、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ベトナム、フィリピン、タイの6か国からなるYABEC-Southが発足し、各国での自主的な交流活動も広がっている。

近年のバイオテクノロジー分野やバイオ産業の目覚ましい発展に伴って、AFOBの活動も非常に活発になり、新しい分野を積極的に取り入れ、対象とする研究分野もさまざまに増え続けている。一方、AFOBが行っている多様な活動における日本人研究者のプレゼンスや貢献は年々低下しているように思われる。我が国の生物工学(バイオテクノロジー)分野を代表する日本生物工学会は、バイオテクノロジーの発展と共にもっと発展すべきであり、是非新しい分野を積極的に取り入れ、アジアにおけるプレゼンスを発揮して欲しいと切に願っている。

AFOBの活動の状況はホームページ(https://www.afob.org/)を参照されたい。


著者紹介 
大阪大学総長補佐・大学院工学研究科(教授・副研究科長)、Asian Federation of Biotechnology(会長)
日本動物細胞工学会(会長)、バイオインダストリー協会バイオエンジニアリング研究会(会長)
日本生物工学会関西支部(支部長)

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