【本部だより】2012 KSBB秋季大会に参加して
生物工学会誌第90巻11号掲載
渡辺 大輔
KSBB(Korean Society for Biotechnology and Bioengineering;韓国生物工学会)は毎年2回、春と秋に年次大会を開催しており、今年の秋季大会は9月20日(木)から21日(金)まで、韓国第3の都市として知られるテグ(Daegu、大邱)市のEXCO(Daegu Exhibition and Convention Center)において行われました。今回筆者は、本会とKSBBの国際交流事業の一環として、このKSBB秋季大会に参加する貴重な機会を与えていただきましたので、その概要をご報告致します。
KSBB秋季大会が開催されたEXCO
テグと言えば、昨年開催された世界陸上競技選手権大会を思い起こす方が多いかもしれませんが、その他にも、今をときめくサムスングループの礎である「三星商会」が設立された地であったり、市の中心部に一大漢方薬街として知られる「薬令市」があったりと、伝統と産業が共存する活気のあふれる街並みを体感することができました。「リンゴと美人の街」というキャッチフレーズも有名なのだそうです。
そんな中開催された今年のKSBB秋季大会の最大の特色は、今回で15回目を迎えるバイオテクノロジーの国際シンポジウム、IBS(International Biotechnology Symposium and Exhibition、9月16日(日)~21日(金))との同時開催という形で実施された点であり、日本や韓国はもとより、世界中から集まった著名な先生方の講演を拝聴することもできました。こうした国際学会とのジョイント企画を積極的に推進することで、韓国のバイオ研究者たちがワールドワイドな研究の潮流をどんどん吸収していくのと同時に、韓国国内の研究成果が世界に向けて広く発信されていく、という素晴らしい相乗効果が生じている様子を目の当たりに致しました。筆者自身は、「清酒」というある意味ドメスティックな研究テーマを扱っていますが、それでも臆することなく研究成果を国際的にアピールすることの重要性について考えさせられました。
シンポジウム会場にて
後列左から,吉田敏臣 大阪大名誉教授、原島先生
前列左から、熊田先生、大河内先生、筆者
このKSBB秋季大会には、本会から、会長である大阪大の原島俊先生を団長として、今年度の斎藤賞を受賞された名古屋大の大河内美奈先生、照井賞を受賞された京都工芸繊維大の熊田陽一先生、そして酒総研の筆者が参加させていただき、このうち、大河内先生、熊田先生と筆者は、本会とKSBBのジョイントシンポジウムにおいて講演を行いました。KSBBからは、延世大学のSeung-Woo Cho先生と光州科学技術院のMin-Gon Kim先生がご講演されました。講演内容については、ペプチド/抗体工学からバイオセンシング、セルエンジニアリングに至るまで実に幅広いものであり、日韓両国におけるバイオ研究の充実ぶりを象徴するシンポジウムになったのではないかと感じました。
また、今年はスケジュールの都合上、当シンポジウムが始まるよりも前に、「Breakfast Meeting」という形で懇親会を開いていただきました。この会には、KSBBのYong Keun Chang会長(KAIST)をはじめとする関係の先生方や、Plenary Lectureでバイオリファイナリーに関する大変興味深い講演をされたIBE(Institute of Biological Engineering)のRonald C. Sims会長(ユタ州立大)も参加され、短い時間ではありましたが、日本と韓国に関する思い出話や、文化の違い、食事やお酒の飲み方の違いに至るまで会話が弾み、親睦を深めることができました。
最後になりますが、今回のKSBB秋季大会でお世話になったKSBBの先生方やスタッフの皆様方、また、このような貴重な機会を与えてくださった日本生物工学会の先生方やスタッフの皆様方に心より御礼申し上げます。