佐々木 建吾
2019年度生物工学奨励賞(斎藤賞)受賞者
神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科

2019年10月9日~11日に韓国大邱広域市EXCO(展示コンベンションセンター)において韓国生物工学会(Korean Society of Biotechnology and Bioengineering; KSBB)の2019年秋季大会(2019 KSBB Fall Meeting and International Symposium)が開催された。日本生物工学会(The Society for Biotechnology, Japan; SBJ)からは、2019年度の学会賞受賞者である紀ノ岡正博先生(功績賞・阪大)、杉浦慎治先生(照井賞・産総研)と筆者(斎藤賞・神大)が招待され、講演を行った。

2019KSBB秋季大会会場 韓国大邱広域市EXCO(展示コンベンションセンター)

EXCO正面


大邱は韓国の南部にある都市で、ソウル・釜山に次ぐ第3の都市とされている。筆者は政治問題により減便したLCCを避けた結果、行きは金浦空港(帰りは仁川空港)を使用してソウルから高速鉄道KTXで大邱に向かわざるをえなかった。反日デモの中であったが、道中、特に問題はなかった。コンビニでは日本語表記の商品は隅に追いやられており、日本との関係が目立つものは避けられているように感じられた。


 

KSBBの秋季プログラムではさまざまな国の研究者が招待講演を行っていたが、中でも欧米に留学した韓国人研究者が多く目立っていた。彼らは流暢な英語をしゃべり、プレゼンテーションについては、実験結果もさることながら、明確なコンセプトをメインとして話すスタイルは欧米そのものであった。Plenary Lectureの6演題のうち筆者が聞けたのは、杉山 弘先生(京大)の「Chemical Biology of Nucleic Acids: DNA Origami and Artificial Genetic Switches(DNA配列を自由に設計した機能性ナノシステムの構築)」、Dr. Peter L. Goering(アメリカ食品医薬品局)の「A Regulatory Science Approach to Assess the Safety of Medical Devices Incorporating Nanotechnology(バイオマーカーの探索およびナノマテリアルによる評価)」、Prof. Young Chul Sung(POSTECH)の「Cancer immunotherapy & IL-7: the past, present & future(がん免疫療法とIL-7:過去、現在そして未来)」の3講演で、応用展開を見据えた韓国の方向性を垣間見ることができた。口演発表やポスターについては、バイオリファイナリー関連(合成生物工学、リグニン利用)に加えて、再生医療関連・ナノバイオテクノロジー関連の発表が多く、先にも記したように創造的な研究に対する高い意欲が感じられた。

初日には、昼食・夕食共に懇親会を催していただき、韓国料理を堪能させていただいた。何よりも現在の両国の緊張した状態にも関わらず、KSBBの先生方とは政治をジョークに変えてお酒を介して楽しく語らうことができ、対話による交流の重要さを痛感させられた。また、年配の先生方からは、我々new-generationが韓国と日本の新しい関係を築いていく、とのお話を頂き、感銘した。筆者としては野心的な韓国の研究者を参考にしつつ、国際交流の重要性を確認した旅となった。

最後に、KSBB訪問をご支援頂いたKSBB会長Hei Chan Lee先生、温かくお世話いただいたJong Wook Hong先生、ならびに日本生物工学会の事務局の方々、何よりも学術的国際交流に関する礎を築いていただいたKSBB-SBJの先生方に厚く御礼申し上げます。

 

KSBB2019 秋季大会 会場にて

後列左よりProf. Hei Chan Lee(KSBB会長), Prof. Jong Wook Hong, Prof. Hsien-Yeh Chen,
前列左より筆者, 紀ノ岡正博先生, 杉浦慎治先生, 林竜平先生(阪大)

 

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