生物工学会誌91巻12号掲載
五味 勝也

日本生物工学会はアジアを中心としたバイオテクノロジー分野における国際交流事業の一環として、15年前から韓国生物工学会(KSBB;The Korean Society for Biotechnology and Bioengineering)との学術交流協定に基づき、それぞれの年次大会に講演者などを招待・派遣して交流を行っている。

昨年度まで本会からは年2回開催されているKSBBの大会のうち秋季大会に、当年度の学会受賞者を3名程度派遣し、国際シンポジウムにおける発表・討議に加えて、懇親会などを通して多くの韓国側研究者との交流を続けてきた。しかし、学会受賞者の研究分野の広がりから共通テーマを掲げたシンポジウムの1セクションとして開催することが適切でなくなりつつあったこともあり、今年度から秋季大会への受賞者の派遣を取りやめ、その代わりにプログラムのフレキシビリティのある春季大会に派遣することにより、受賞者の研究分野にフィットしたシンポジウムでの講演を行えるように変更した。今年度はそのような交流形式の変更初年度に加えて本学会役員の交代期でもあったことから、今後の交流に関する討議もあわせて、新会長の九州大学・園元先生と副会長である筆者の2名で表敬訪問を兼ねて参加することと相成った。ここでは今回参加した2013年度KSBB秋季大会について報告させていただくこととしたい。

KSBB秋季大会が開催された釜山市BEXCO

KSBB秋季大会が開催された
釜山市BEXCO

 

2013年度KSBB秋季大会は、10月16日~18日に韓国の釜山市のBEXCOで開催された。ご存知の通り、釜山は韓国の南東端に位置している韓国第二の大都市(人口は350万人)であり、韓国の主要都市の中ではもっとも日本に近く、博多港から高速フェリーを使えば3時間ほどで到着できる昔からわが国と関係の深い都市である。BEXCOは10年ほど前に完成した大きなコンベンションセンターで、これまで日韓ワールドカップの組合せ抽選会場やAPECサミット会議などを開催したことで知られている。

 

今回の大会プログラム(手帳サイズを縦に長くした形でコンパクト、要旨はインターネットからアクセス)によると、1件のプリナリーレクチャーと2件の特別講演に加えて16件のシンポジウム(うち4件は国際シンポジウム)、65件の口頭発表、440件のポスター発表(うち31演題は3分間スピーチも行われた)というたくさんの発表が行われた。国際シンポジウムのうちの1件は、日本動物細胞工学会(JAACT)とのジョイントシンポジウムで、JAACTの副会長でもある北海道大学・髙木睦先生が参加され講演を行った。また、本会の中部支部長である静岡大学・朴龍洙先生も「生物工学特講」というセッションの講演のため参加されていた。

 

大会のポスターセッション会場

大会のポスターセッション会場

今回の参加は本会とKSBBとの今後の交流に関する討議が主であったことと滞在期間が短かったため、多くのシンポジウムやポスター発表を聞くことはできなかったが、出席したプリナリーレクチャーと国際シンポジウムともにバイオリファイナリーに関わる代謝工学や合成生物学に関するものであり、韓国においてもこの領域の研究が活発に進められていることと、その研究レベルもきわめて高いことが十分窺われた。また、ポスター発表では学生たちが非常に熱心に討議を行っているだけでなく、すべてのポスターが英語表記であり、韓国語のわからない我々の質問にもしっかり英語で回答してくれていたことにも感心した。ポスター発表を行うことが多くなってきた生物工学会の年次大会でも参考にすべきことのように強く感じた次第である。

なお、来年4月に開催予定の2014年度KSBB春季大会(開催地は慶州)には、今年度の学会受賞者のうち、北陸先端科学技術大学院大学・高木昌宏先生(功績賞)、理化学研究所・菊地淳先生(奨励賞(斎藤賞))、横浜国立大学・福田純二先生(奨励賞(照井賞))の3名の先生方を派遣することとなっている。

懇親会後にKSBB関係者と会場にて.左から,Byung-Gee Kim先生(KSBB副会長・ソウル大学), 筆者,Seung Wook Kim先生(KSBB会長・高麗大学), 園元先生,SeungPil Pack先生(KSBB国際交流担当・高麗大学)

懇親会後にKSBB関係者と会場にて
左から、Byung-Gee Kim先生(KSBB副会長・ソウル大学)
筆者、Seung Wook Kim先生(KSBB会長・高麗大学)
園元先生、SeungPil Pack先生(KSBB国際交流担当・高麗大学)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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