大会実行委員長 園元 謙二

第62回大会を、2010年10月27日(水)から10月29日(金)の3日間の日程で、宮崎市のワールドコンベンションセンター・サミット(フェニックス・シーガイア・リゾート内)で開催いたしました。多数の会員の皆様のご参加と、展示出展あるいはランチョンセミナーをしていただいた関連企業の皆様のご協力を得て無事実行することができました。参加者の皆様、ならびに宮崎はじめ九州支部からの実行委員の皆様、また特にすべての業務に目を通していただきました大会副実行委員長の水光先生(宮崎大学)、総務の榊原先生(宮崎大学)、総務の中山先生(九州大学)、アルバイト学生諸君に厚く御礼申し上げます。さらに、多大なご支援をいただきました宮崎県・宮崎市・宮崎大学・(財)みやざき観光コンベンション協会、ビール・焼酎・泡盛・ソフトドリンクなどをご寄贈いただいた団体に深く感謝申し上げます。まずは、宮崎での初めての大会開催について、その経緯や狙いなどを述べたいと思います。

九州支部は1994年に設立され、1995年に福岡、2003年に熊本で年次大会をお世話してきました。今回、支部として3回目の大会開催を迎えるにあたり、どこで行うことが支部や延いては学会の発展につながるか2年半ほど前に考えました。九州支部各県を見渡し、東国原知事の下、地方からの発信が著しい神話の里、宮崎を候補としました。しかし、実際にお世話していただく強力なパートナーが必要でしたが、幸いにも水光先生にご快諾いただきました。開催時期と会場について、宮崎へは全国からの多くの参加者が空路を利用することは自明であり、例年、南九州を襲う台風のことを考えればできるだけ遅い時期を選ばざるを得ませんでした。会場は、夏休み期間しか利用できない大学をあきらめ、ワールドコンベンションセンター・サミットと決めました。1 年半ほど前に、九州支部各県の代表者に実際に会場にお越しいただき、下見と今後の運営方針を検討しました。実行委員会を組織するためには、宮崎だけでなく九州支部一丸となった支援体制が不可欠でした。また、高額な会場費を賄うためにも強力な布陣で望む必要がありました。いろいろな困難を乗り越えた暁には、宮崎地域経済への貢献、地域の知的ネットワーク形成の促進、さらには九州支部や学会の発展が期待されました。

次に、大会テーマ「伝統の技と先端科学技術の融合」を設定しました。本学会の出発点である醸造と近年急速に発展している科学技術を研究のみならず教育の場でも、どのように融合させていくかは本学会の大きな使命と考えたからです。また、学会本部と連携し、シンポジウムに本部企画を入れ、学会が目指す中期的な方向性を明確にしました。さらに、展示会の活性化のために、新たな出展企業の発掘を行うと共に、出展企業の展示が最大限の効果をあげられるように配慮しました。では、大会の模様について、以下のようにご報告申し上げます。
 

授賞式にて.前列向かって左から,新名,西山,木田,近藤,石井,吉田,馬場.後列向かって左から,Yu-Hong Wei,加藤,福田,荒木,榊原,湯,芦田.(敬称略)

授賞式にて.前列向かって左から,新名,西山,木田,近藤,石井,吉田,馬場.
後列向かって左から,Yu-Hong Wei,加藤,福田,荒木,榊原,湯,芦田.(敬称略)


会場からは雄大な太平洋を望むすばらしい景観が得られ、参加者の疲れた頭脳に一服の良薬になったと思います。また、この会場の最大の特徴は、授賞式がある初日からすべての発表・展示などや懇親会をも集約して行うことができ、多くの参加者が情報交換や交流を行いやすい環境でした。

本大会の大きな特徴は次の4つでした。①一般講演をポスター発表とした(2、3日目)、②シンポジウムを本部企画と一般公募の二本立てとした、③民間企業のアピールの場として12のランチョンセミナーを設けた、④全国の大学・公設試などから自慢のお酒を展示する「全国酒自慢」コーナーを設けた。

特に、本部企画のシンポジウム3テーマ(①酒類の香気成分研究の新展開-お酒の香りの基礎から最新研究まで-、②醗酵工業とものづくりの最前線、③大学発技術シーズ発表会<物質生産、装置、分析、周辺機器に関するシーズ提案>)は、一般公募で選ばれた優れた企画のシンポジウム13テーマ(総計90演題)とランチョンセミナー12テーマと共に、大会初日から3日目にかけて毎日開催されました。いずれの時間帯も4テーマ同時開催で、各会場の大きさ(約200名収容)と相まって機能的な運営となり、大好評でした。また、広いポスター会場が人で溢れ、ポスター発表でしか得られない熱心な討論が行われ、時間が経つのを忘れるほどでした。
 

KSBB会長あいさつ

KSBB会長あいさつ

ポスター会場にて

ポスター会場にて

 

 

 

 

 

 

 

 

そのほか、韓国生物工学会(KSBB)から招待講演(ポスター発表)が4題で、興味ある内容でした。一般演題は過去最大規模の663演題でした。その主な内訳は、①遺伝学・分子生物学・遺伝子工学(78演題)、②酵素学・タンパク質工学・酵素工学(123演題)、③代謝生理学・発酵生産(73演題)、④醸造・食品工学(65演題)、⑤環境バイオテクノロジー(156演題)、⑥生物化学工学・植物バイオテクノロジー・動物バイオテクノロジー(110演題)、⑦バイオ情報(10演題)、⑧センサー計測技術・生体関連化学・生体分子工学(48演題)となっています。この中から、プログラム編集委員会が特に話題性が高い22 演題をトピックスとして選定しました。また、当該研究の背景や応用をわかりやすく解説していただいたトピックス集を作成し、大会会場で無料配布ました。さらに、大会に先立ち東京で行われた記者会見では、大手新聞社をはじめ10社以上を前に、本大会を代表する研究成果・シーズとして公開しました。

大会参加者は、一般(正会員と非会員)982名、学生会員389名、および招待参加者を含めての合計約1600名で、過去最大のものとなりました。今回の展示会は盛況で、約3割の企業が初出展であり、31社および4団体の参加で51ブースでした。展示会場には休憩スペースを配置し、かつポスター会場で挟み込んだため、活発な情報交換と交流の場ともなり、出展企業の皆様にも喜んでいただけたと自負しています。
 

展示会場にて

展示会場にて

全国酒自慢

全国酒自慢

懇親会・鏡割り

懇親会・鏡割り

懇親会

懇親会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのほか、特別セミナーとして修士・博士課程在学者をはじめ若手研究者を対象とした「若手理系人のためのキャリアセミナー」、若手の研究者・技術者・学生の自由な交流の場として「若手交流会」、九州地区の産業技術成果をアピールした(財)九州産業技術センターによるセミナーも開催され、大変盛況でした。また、学会本部主催の「会員のつどい」が行われ、学会の公益法人化、学会の存在意義、アジア各国の学会との戦略的な互恵関係などについての説明&質疑応答がありました。さらに、展示会出展業者と学会本部・実行委員会関係者との懇談が行われ、今後の出展の継続をお願いすると共に、公益法人化に伴う学会サポート体制の強化(たとえば賛助会員の増強、寄付による企業メリットのアピールなど)について協力をお願いしました。

初日の授賞式・受賞の挨拶・受賞講演については、誌面の都合で写真のみ紹介しますが、受賞された各位の今後のご発展をお祈りします。懇親会は初日の夕刻、授賞式と同じ会場で開催しました。招待者を含めて約500名の参加を得て、会場に溢れんばかりの大盛況でした。特に、焼酎文化を誇る九州支部各県の多彩な焼酎・泡盛が一堂に会した様子は盛観で、皆様には十分にご賞味いただいたと思います。最後に、次回開催地の東京農工大学の養王田先生からプロジェクターを使った紹介がありました。
 

懇親会に提供された九州各地の焼酎・泡盛

懇親会に提供された九州各地の焼酎・泡盛


宮崎での大会は、今後、他の支部での開催地選択における試金石となると思われます。たとえば、会場設営や運営業務の分担、要旨集などの印刷業務など、宮崎の地元企業に依頼し、地域企業の活性化にも少なからず貢献できました。今大会が、地域の活性化を通じて日本生物工学会における学術推進・産学官交流などのさらなる発展につながるターニングポイントとなることを祈念しています。最後になりましたが、本大会の開催が、口蹄疫に見舞われて甚大な被害を被った宮崎県の復興の一助となれば望外の喜びです。

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