【随縁随意】チェンジ – 英文誌 大竹 久夫
生物工学会誌 第87巻 第4号
英文誌編集委員長 大竹 久夫
英文誌のスタイルが変わったことをご存知でしょうか?今年から英文誌が有料配布になりましたのでまだご存知ない方もおいでになるのではと危惧しております。ぜひ一度学会のホームページを覗いてみてください。Elsevier社のデザインによる新しい英文誌の表紙には昨年の表紙写真コンテストで優勝された筑波大学王碧昭先生の糸球体上皮細胞のカラー写真が使われています。表紙を飾るカラー写真につきましては今後も公募を行い半年ごとに更新する予定です。
ところで今回の英文誌の変更は一昨年秋から取り組んで参りました当学会の収支改善に伴うものです。海外大手出版社ElsevierSpringerおよびWiley-Blackwellの3社と交渉を重ねた結果Elsevier社と新規契約を締結することとなり昨年10月中国大連市におきまして塩谷捨明会長とElsevier社のB. Straub氏により契約書の調印が行われました。
今後は編集委員が担当する業務を除きましてElsevier社が表紙のデザインから印刷原稿の作成までを担当します。このため英文誌の表紙にはElsevier社のロゴが新たに登場しましたが当学会のロゴを左上に据えることにより本誌が当学会の英文誌であることを主張したつもりです。本文につきましても一頁当たりの文字数を増やすため使用フォントと文字サイズが変わりましたが論文タイトル要旨や文献表記などはこれまでの英文誌のスタイルをできるだけ継承するよう努めました。
また昨年秋からElsevier社より無料提供された電子投稿編集システムを使用することにより編集作業はさらに円滑なものとなっております。もちろんこれらの取り組み全体が学会の収支改善に大きく貢献したことは言うまでもありません。
英文誌は今成長するアジアにおける生物工学分野のトップジャーナルを目指しています。英文誌の年間原稿受付数は2006年には312に過ぎませんでしたが2007年に406と初めて400台に到達し2008年には481にまで増加しています。海外からの投稿数も増え続け2006年に105であった年間受付数は2008年には239と倍増しています。一方論文の受理率は投稿受付論文全体では約45%海外からの投稿論文に限って言えば約24%に留まっています。年間原稿受付数が500に届こうとする中編集委員一人当たりが担当する論文数は年間20を超えるに至っています。海外から盗作論文が投稿されてきた事例も一度ならずあり論文の審査にはこれまで以上に神経を使わざるを得なくなっています。編集委員の多くは研究活動にも積極的に取り組んでおられる若手の会員であり編集作業の負担増が気になります。言うまでもなく学会本部で英文誌の編集に従事されておられる方々への負担はさらに厳しいものとなっています。会員の皆様におかれましてはこのような状況をよくご理解頂き英文誌投稿論文の速やかな審査にご協力をお願い申し上げます。
英文誌のインパクトファクターは2006年に1.136と初めて1.0を超え2007年には1.782にまで増加しています。面白いことに英国のTaylor & Francis出版社から頂戴した資料によりますと国別にみたJBB掲載論文引用回数の過去5年間の伸び率はブラジルが600%中国が350%スペイン韓国およびインドがそれぞれ200%を超えているのに対して日本国内での引用回数の伸び率は−100%とむしろ減少しているようです。またElsevier社提供の統計資料によりますと2007年の段階で過去2年間に一度も引用されなかった英文誌掲載論文の割合は35%もあり5年間のスパンで見ましても32%あります。英文誌掲載論文の約3分の1が2年間に著者自身も含めて一度も引用されていないことには驚きを感じざるを得ません。会員の皆様におかれましては英文誌に掲載されたご自身の論文を掲載年から2年以内により積極的に引用して頂きますようお願い致します。
最後に今年11月に神戸市で開催される国際学会APBioChEC2009の要旨集を英文誌の特別号として出版する予定です。この要旨集の編集作業にはElsevier社より紹介のあったOxford Abstract社の簡易編集システムが使われます。このシステムは大変良くできておりほぼ自動的に要旨集の編集が可能です。アジアを中心とした国際学会を開催される場合には英文誌特集号を要旨集や論文集にお使い頂けますと英文誌の宣伝にもなりますのでぜひご検討下さい。
著者紹介 大阪大学大学院工学研究科(教授)