第118回を迎える醗酵学懇話会ですが、新型コロナの感染状況を受けて、オンラインライブ配信による開催となります。今回は、醗酵学懇話会の本流である、発酵や醸造に関する内容が中心となっています。またオンライン開催の利点を活かして、関西支部の枠にとらわれない広い地域から講演者の方々にお集まりいただきました。多数のご参加をお待ちしております。
 

  • 日時:2021年9月28日(火)13:30~17:30
     
  • 開催方法:WEB配信(Zoomによるオンラインライブ配信)
     
  • プログラム:

13:00~  Zoom入室開始(ライブ配信)

13:30~13:35 開式の辞 ………大政 健史(関西支部支部長・大阪大学大学院工学研究科)

13:35~14:10
「大阪市立大学オリジナル日本酒プロジェクトに参加して」
 ……田中 俊雄(大阪市立大学 名誉教授)

新大学「大阪公立大学」への移行(2022年)に先立って、大阪市立大学は最後の節目となる創立140周年(2020年)を迎えた。その節目に合わせて、記念のオリジナル日本酒をプロデュースする企画が浮上した。大学にゆかりの野生酵母を採取する試みが先行する中、急遽、かつて京都市産業技術研究所と共同開発した清酒酵母「京の華」を用いる別案が採用された。本酵母は酢酸イソアミル(バナナ様吟醸香成分)合成酵素の制御機構に関わるアナログ耐性変異株として取得され、以来、複数の蔵元で「純米酒」や「純米吟醸酒」の醸造に使用されている。オリジナル日本酒第1弾は蔵元の名に因んで「月の桂」と命名され、クラウドファンディングで販売された。第1弾の完売をうけて、翌年には新たに第2弾「月朧ろ」を上槽した。「月朧ろ」は当初から種々ネットショップや近鉄あべのハルカスの店頭で販売されている。これら日本酒にまつわる話題を提供する。

14:10~14:45
「コロナ禍での挑戦 砺波野スピリット開発秘話」
 …稲垣 貴彦(若鶴酒造株式会社)

若鶴酒造は富山県の酒蔵である。江戸時代に創業し清酒の製造をはじめ、戦後からはウイスキーの製造もおこなってきた。2020年3月30日、富山県で初めてコロナ感染者が確認。当時全国的に消毒用エタノールが不足しており、医療体制にも深刻な影響を及ぼしていた。そんななか酒蔵として出来ることはないかという想いから酒蔵の醸造用のエタノールとボトリングライン、物流を活用することを思いつく。そして日本で先駆けて消毒液として代替可能な高濃度エタノール「砺波野スピリット77」をリリース。それは薬規法、消防法、酒税法といった縦割りや規制との戦いでもあり、情報の流れを如何にコントロールするかという戦いでもあった。その動きは全国の酒蔵へと波及し、全員が力を合わせたことで少しでも状況を好転することができた。当時を振り返りながら、状況がどう変わっていったのかを紹介する。

14:45~15:20 
「老舗味噌屋さんから分離した乳酸菌(PP165)の商品開発事例」
 …阿部 直樹(公益財団法人長野県テクノ財団)
 ⇒赤羽 弘文(公益財団法人長野県テクノ財団)<講演者変更>


老舗醤油屋の会長さんから、「味噌や醤油の麹を造る時、バチルス菌(納豆菌の仲間)が混入すると、麹が全部ダメになってしまうから大変なんだ。」という話をお聞きした。(公財)長野県テクノ財団は、味噌・醬油製造業、信州大学、長野県工業技術センター等が参加する産学官連携事業として、老舗の味噌屋さんの味噌モロミから、バチルス菌に強い乳酸菌(PP165)を分離した。PP165のバチルス菌に対する抗菌性を確認するために、長野県北部の4社の味噌・醤油屋さんで実証試験を行った。試験結果から、PP165はバチルス菌の増殖を抑制することが解り、良質の麹ができた。さらに、PP165の接種により有機酸が増加するため、旨味成分がアップした。現在PP165を利用した発酵食品は、味噌・減塩味噌・醤油豆・甘酒・日本酒など多岐にわたっている。

15:20~15:35 休憩

15:35~16:10
「機械学習を活用した飲料製品開発の手法と評価」
 …有里 悠希、柏原 洋允(日本電気株式会社 AIアナリティクス事業部)

近年、機械学習および人工知能(AI)は、小売業の需要予測や画像解析による故障検知など、多くのビジネス分野で取り入れられ広がりを見せている。しかし、食品や飲料のレシピとして活用された例はまだ少ない。そこで今回、NECではAI ビジネスにおけるプロモーション活動の一環として、AIによるデータ分析の結果をレシピとした飲料(クラフトビール)開発を行ったのでそれを紹介する。開発のコンセプトとしては、多くの人が一度は経験したであろう世代間ギャップの解消を目的とし、あらゆる分析手法を用いてクラフトビール上で世代の価値観を表現することを試みた。その分析手法の詳細や、販売後に行ったアンケート結果を用いた人間とAIの認識の相違について考察も行ったのでそれも併せて紹介する。

16:10~16:45
「英国酒蔵の諸事情」
 …Tony Mitchell、 溝畑 利行、 橋本 良英(Dojima Sake Brewery UK&CO. (株)堂島麦酒醸造所)

2015年、住民説明会(開発許可申請の為)開催でアンケートを求めた時、日本酒を飲んだ経験のある人1%以下の数字に驚愕させられたことにはじまった。自然保護意識の高さからくる、樹木の根にまで配慮を求められるなか、良質な仕込水を求め水質検査を繰り返し井戸を掘り、醸造免許申請、設備等における保健所への対応や製造開始時には、原料米の確保、水質の違いや気候の違いなど醸造環境の日本との違いからの諸間題は山積状況である。世界各国で「SAKE」の醸造所及び醸造家が想像をはるかに超え毎年増加する時代、ケンブリッジという地域の特性をいかし世界中から共に学び醸造し又、日本酒を通じて日本文化の発信に取り組んでいる英国酒蔵の現状と展望を紹介したい。

16:45~16:50 閉会の辞………山田 翼(関西支部副支部長・菊正宗酒造株式会社)

16:50~17:30 オンライン交流会

  • 定員:300名
    ※非会員の場合は申し込み時に紹介者(会員)の会員情報の入力が必要となります。
    ※Zoom IDは開催2週間前を目途にお知らせいたします。
     
  • 参加費:無料
     
  • 申込み方法:こちらのWEBフォームよりお申し込み下さい。
    氏名、一般・学生の別、会員・非会員の別、紹介者(非会員の場合のみ)、所属、連絡先(TEL、E-mail)を明記してください。
     
  • 申込み締切日:2021年9月13日(月)正午9月16日(木)正午 延長しました!
     
  • 問合せ先:
    日本生物工学会 関西支部庶務幹事 古賀 雄一
    E-mail TEL: 06-6879-7443 


【共催】神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科

 

⇒関西支部Topへ