学生に事故報告の重要性を理解させ、学生実験中の事故事例を収集分析したところ、事故の65% は切傷であり、その47% はゴム栓にガラス管を挿入する際に起こっていた。

ガラス管の破損はゴム栓の根本だけでなく、根本から5~6cmのところで起こっていた。前者の原因は、挿入時にゴム栓の根本から2cm の所を持っても、小指はゴム栓から約10cm 離れているため、人差し指と親指の5倍の曲げモーメントが発生することが、後者の原因は、挿入時にゴム栓の摩擦に打ち勝つためにガラス管を握りしめると、手のひら (小指の付け根) と親指で支えられたガラス管を中指と薬指で押さえつけることになるのが原因であると分析し、実験でこれらを実証した。この結果をふまえて、ガラス管挿入時には、親指、人差し指、中指の3指で、根本から2cm 以内を持つように指導したところ、事故は激減した。

圓尾勝彦,化学系有機化学実験における事故の分析と安全指導,第2回「学術研究機関における安全」シンポジウム要旨集,pp42-46 (1997)より著者の了解を得て要約。
化学実験の安全指針, 日本化学会編, 丸善 (1999),pp138-141 もご参照下さい。

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