【研究部会】2009年度 乳酸菌・腸内細菌工学研究部会 講演会
2009年度乳酸菌・腸内細菌工学研究部会
主催 日本生物工学会乳酸菌・腸内細菌工学研究部会
共催 日本乳酸菌学会
乳酸菌・腸内細菌工学研究部会では、毎年、関連の研究者が一同に会して、昼は各自の研究成果を発表し、夜は車座になって情報交換を行う講演会を企画しております。本年度は以下の要領で開催しますので奮ってご参加下さい。
日時 | 2009年5月15日(金)13:00~16日(土)12:00 |
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場所 | 加賀・片山津温泉「加賀観光ホテル」(〒922-0412 石川県加賀市片山津温泉 TEL: 0761-74-1101) |
会費 | 一般18,500円,学生13,500円(一泊宿泊費・懇親会費含む) |
定員 | 70名 |
申込締切日 | 2009年4月17日(金) |
申込方法 | 下記事務局までご連絡下さい。折り返し申込書をお送り致しますので,必要事項をご記入の上,再度事務局へ申込書をご返送下さい。 |
連絡先 | 日本生物工学会乳酸菌・腸内細菌工学研究部会 2009年度講演会事務局(担当:小田・河上・山下) (近畿日本ツーリスト株式会社札幌事業部内) E-mail: TEL. 011-280-8855 FAX. 011-280-2732 |
プログラム(確定しました)
一日目(5月15日)
13:30-13:40 はじめに
13:40-14:00
ビフィズス菌由来1,2-α-L-フコシダーゼを用いたヒトミルクオリゴ糖2’-フコシルラクトースの合成 …(1石川県大,2高エネ研・物構研,3農研機構・食総研,4京大生命・統合生命)…○片山 高嶺1・和田 潤1・本多 裕司1・長江 雅倫2・加藤 龍一2・若槻 壮市2・谷口 肇1・熊谷 英彦1・北岡 本光3・山本 憲二4
糖質加水分解酵素の反応は通常、加水分解反応に大きく偏っているが、近年、触媒残基のうち求核残基をアミノ酸置換した変異体とフッ化糖を用いることにより効率的に糖質を合成する手法(グライコシンターゼ)が開発された。Bifidobacterium bifidum由来1,2-α-L-フコシダーゼはヒトミルクオリゴ糖などの様々な糖質の非還元末端側に存在するFuc α-1,2Gal 構造からフコースを遊離する糖質加水分解酵素であり、これまでの研究において4つのアミノ酸残基(N421、N423、E566、D766)が反応に重要であることを明らかとしている。今回、我々はこれらの残基のアミノ酸置換体を作製して本酵素のグライコシンターゼ化に取り組み、母乳オリゴ糖の主成分である2’-フコシルラクトースの酵素合成に成功した。
14:00-14:40
タンナーゼ産生細菌の探索とその利用への展望…(神戸大院・農)…○大澤 朗
植物の「抗草食」成分と考えられる加水分解型タンニンを分解する酵素、タンナーゼは当初真菌類によって産生されることが知られていたが、近年の研究により動物の腸内あるいは植物の発酵食品に生息する細菌群にもこの酵素を産生するものがいることが明にされてきている。これらのタンナーゼ産生細菌の発見からプロバイオティクス的利用への展望までを講述する。
14:40-15:00
偏性嫌気性ビフィズス菌Bifidobacterium longum JBL05のCO2要求性に関する代謝解析 …(1金沢大・環日本海域環境研究センター、2阪大院工・生命先端、3森下仁丹・バイオファーマ研、4崇城大・応生命)…○仁宮一章1、川畑隆司2、金谷 忠3、片倉啓雄2、浅田雅宣3、塩谷捨明4
細胞外多糖生産性ビフィズス菌Bifidobacterium longum JBL05をミルク分解培地で嫌気培養した際に見られたCO2要求性に関して、その原因を13CO2通気培養後の細胞内アミノ酸GC-MS分析、そしてアミノ酸や核酸添加培養の結果から解析した。その結果、0%CO2 の嫌気培養下ではアミノ酸合成ではなく核酸合成が律速になるため、B. longum JBL05の増殖が滞ることが分かった。
15:00-15:15 休憩
15:15-15:55
乳酸菌を用いた焼酎粕の高付加価値素材への転換プロセス…(1三和酒類,2九大院・農,3九大バイオアーク)…○古田 吉史1・丸岡 生行1・中村 彰宏1・大森 俊郎1・園元 謙二2,3
焼酎製造時に副産物として排出される蒸留粕の多くは依然として産廃処理されている。そこで、蒸留粕の有効活用を促進することを目的として、大麦焼酎粕の微生物培地素材としての有効性を評価し、さらに大麦焼酎粕から乳酸菌を用いた有用物質生産技術の開発を行った。大麦焼酎粕から得られる発酵大麦エキス(Fermented Barley Extract: FBE)は、乳酸菌およびビフィズス菌に対する増殖促進因子を含有する優れた培地窒素源であった。FBEを主成分とする培地(FBE培地)使用し、試薬培地と同等量のナイシンA並びに高濃度のγ-アミノ酪酸(GABA)の生産が可能であった。
15:55-16:35
乳酸菌利用による有用物質(抗菌ペプチド)の医療応用…(1オーム乳業㈱、2熊本製粉㈱、3ADEKAクリーンエイド㈱、4九大院・農、5九大・バイオアーク、6Qok・Bio LLP)…○永利浩平1、林いずみ2、竹花稔彦3、善藤威史4、中山二郎4、園元謙二4,5,6
乳酸菌が生産する抗菌ペプチドは、最終的にはアミノ酸へ分解される安全性の高い物質である。また、MRSAやVREのような多剤耐性菌に対して強い抗菌活性を示し、抗生物質とは異なり耐性菌を誘導しにくいといった特徴を持った天然抗菌素材である。今回は、我々が医療向けに開発した精製抗菌ペプチドの性能評価やその精製品を利用した新規抗菌剤プロトタイプの一部を紹介する。
(終了後,部会幹事会の予定)
19:30-21:30 懇親会
二日目(5月16日)
10:00-10:20
新規二次胆汁酸生成腸内細菌の探索と変換特性について…(北大院農・応生科)…○吹谷 智・中村 勇介・川嶋 紘子・和田 大・横田 篤
腸内細菌による胆汁酸変換については,1970~1980年代に胆汁酸変換酵素の精製が行われ,酵素学的な特性と反応機構が既に詳細に研究されている.しかし,胆汁酸変換反応が腸内細菌の腸内での生存においてどのような生理学的意義を持っているのか,という点については不明のままである.我々は,腸内細菌の胆汁酸変換反応の生理学的な意義の解明を目的として,まず新規胆汁酸変換菌をヒト糞便から単離し,その変換反応の生理学的な解析を行った.結果として,胆汁酸の7位の水酸基に作用する7-Hydroxysteroid dehydrogenaseを持つ新規胆汁酸変換菌2株を単離した.培養による変換反応の解析および粗酵素活性測定の結果から,これらの菌種の胆汁酸変換反応の生理学的意義を考察する.
10:20-10:35 話題提供…(森下仁丹)…金谷 忠
10:35-10:55
乳酸菌と酵母による複合バイオフィルムの形成…(1日大・生物資源,2農研機構・畜草研)…○古川 壮一1・能島 菜積1・磯前 亮介1・小林 美穂2・鈴木 チセ2・荻原 博和1・森永 康1
これまで福山酢から分離した乳酸菌Lactobacillus plantarum ML11-11を出芽酵母と複合培養すると、両菌細胞が直接接触して、顕著な複合バイオフィルム(BF)を形成することを報告してきた。今回、Lactobacillus属をはじめとする7属ならびに未同定株を含む150株以上の乳酸菌保存株を用いてスクリーニングを行い、新たに出芽酵母と顕著に複合バイオフィルムを形成する3株、L. plantarum E31、D71及びLeuconostoc mesenteroides K01を見出した。これらの結果より、L. plantarum ML11-11にみられる酵母との複合バイオフィルム形成は乳酸菌に一般的に見られるものではなく、L. plantarum などの限られた菌種で、株特異的に発現する表現型であることが示唆された.
10:55-11:05 休憩
11:05-11:45
Plasmid Artificial modification(PAM)法によるビフィズス菌の形質転換…(岐阜大・連農)…○鈴木 徹・安井 一将・坂口 広大
ビフィズス菌は、長い研究の歴史があり、多くのゲノム情報が得られているにもかかわらず、形質転換、部位特異的組み換え、ランダム変異などの手法が確立されていなかったため、分子生物学的研究が立ち後れている。我々は、これらの手法の内で最も重要な形質転換系を、ゲノム情報を用いることにより確立することを試みた。B. adolescentis ATCC15703は、形質転換効率が1×100/μg DNAと著しく低い。我々は、その全ゲノム配列を報告したが、逆遺伝学的手法は使用できなかった。本菌が二つの制限修飾酵素系を有することに着目し、この防御系を回避することを目指した。二つのDNAメチラーゼ遺伝子を発現させた大腸菌(PAMホスト)を構築し、シャトルベクターを一旦このホストを経由させて、エレクトロポレーションを行ったところ、効率は、107倍に向上した。
11:45-11:50 おわりに