乳酸菌・腸内細菌工学研究部会では毎年,関連の研究者が一同に会して,昼は各自の研究成果を発表し,夜は車座になって情報交換を行う講演会を企画しております.本年度は以下の要領で開催しますので奮ってご参加下さい.

主催 日本生物工学会乳酸菌・腸内細菌工学研究部会
共催 日本乳酸菌学会
 

日時 2008年6月6日(金)13:00 ~ 6月7日(土)12:00
会場 サントリー箕面トレーニングセンター
〒562-0027 大阪府箕面市石丸2-11-1, TEL 072-729-7324
会費 一般14,000円,学生8,000円(一泊宿泊費・懇親会費含む)
定員 70名
申込方法 下記事務局まで御連絡下さい.折り返し申込書をお送り致しますので,必要事項を御記入の上,再度事務局へ申込書を御返送下さい.
申し込み締め切り 5月19日(月)(延長しました)
お問合せ先 日本生物工学会乳酸菌・腸内細菌工学研究部会2008年度講演会事務局
近畿日本ツーリスト株式会社札幌事業部内
TEL 011-280-8855 FAX 011-280-2732
E-mail: hkd-ec@or.knt.co.jp 担当:小田・権平・山下

 プログラム (確定しました)


一日目(6月6日)

  • 13:00-13:10 はじめに
    部会長 横田 篤
     
  • 13:10-13:15 ご挨拶
    サントリー(株)乳酸菌研究所所長 安田 隆
     
  • 13:20-13:40 Lactobacillus pentosus S-PT84株による免疫調節作用
    *前川敏宏、出雲貴幸、北川義徳、柴田浩志、木曽良信(サントリー(株)健康科学研究所)

    近年、乳酸菌による免疫賦活作用が注目されている中で、我々は京都の伝統的な漬物であるしば漬け由来の乳酸菌に注目し、Th1型免疫賦活作用の強い乳酸菌L. pentosus S-PT84株を選抜した。これまで、本菌体による自然免疫活性化作用、腸管および全身免疫活性化作用、免疫バランス改善作用を明らかにし、更にTh1/Th2バランス改善作用に基づく抗アレルギー作用、抗ストレス作用、免疫低下抑制作用、細菌感染抑制作用などについても明らかにしている。本講演では、S-PT84株の持つこれら免疫機能調節作用についてのレビューを報告する。
     
  • 13:45-14:30 腸内細菌ダイナミクス解析の工学的アプローチ
    *中島田豊1、渡邊健太郎2、西尾尚道2、道中敦子3、藤井敏雄31東京農工大・共生、2広島大院・先端・分子生命、3キリンホールディングス・フロンティア技術研)

    近年、成人病予防や免疫機能改善を目的として、プレバイオティクスに代表される腸内細菌叢の制御方策が研究されている。しかし、実際の人や家畜腸管内の微生物叢をリアルタイムにモニタリングすることは難しい。本発表では、腸内菌叢ダイナミクスを解析するため工学的手法として、これまでに発表されてきた人工腸管リアクターシステムについての構造と得られた知見を概説するとともに、将来の展望について述べたい。
     
  • 14:35-14:55 Lactococcus lactis IO-1株における遺伝子操作技術の開発とキシロース代謝改変の試み
    *門多真理子1, 3、園元謙二2、吉川博文31武蔵野大・環境、2九大院・農、3農大・バイオ)

     L. lactis IO-1株はL-乳酸のみを高効率で生産できキシロオリゴ糖を資化できる。キシランから高効率乳酸発酵を行うことをめざし、IO-1株の遺伝的改変を試みている。染色体組込み型DNAの導入によりキシロースオペロン制御遺伝子xylRの欠損変異株を分離し、その機能解析を行った結果を中心に述べる。
     
  • 14:55-15:10 休憩
     
  • 15:10-15:55 福山壷酢由来乳酸菌と酵母の相互作用
    *古川壮一1、吉田可奈子1、能島菜積1、河原井武人1、荻原博和1、山崎眞狩2、森永康1
    1日大・生物資源、2日大院・総合科学)

    福山酢は、鹿児島県福山町に古から伝わる伝統的な米酢である。我々は、伝統発酵における微生物間相互作用に関して、バイオフィルム形成という視点で解析を試みた。 その結果、福山酢の醸造試料から、複合培養にて顕著にバイオフィルム(BF)を形成する酵母(Saccharomyces cerevisiae Y11-43)と乳酸菌(Lactobacillus plantarum ML11-11)の組合せを見出した。この菌の共培養時のBF形成には、両菌の細胞同士の直接接触が不可欠であった。また、ML11-11は各種既知酵母との組合せでもBFを形成したことから、ML11-11は酵母細胞と接触してBFを形成する特異な性質をもつと考えられた。
     
  • 16:00-16:20 乳酸菌・パン酵母複合発酵系によるパン生地の食品機能性強化
    *安藤 聡、小松崎典子、中村敏英、島 純(農研機構・食総研)

    サワーブレッド等のパン生地は、乳酸菌と酵母を主体とした複合微生物系と考えることが出来る。我々は、乳酸菌機能の活用によるパン生地の機能性強化の可能性について検討を行ってきた。今回は、乳酸菌・パン酵母からなる複合発酵系におけるγ-アミノ酪酸(GABA)の増強の試みについて報告する。まず、GABA高生産乳酸菌を分離して、その特性解明を行った。また、パン酵母は発酵中にGABAを消費することが知られているため、GABA非資化性パン酵母変異株を分離し、遺伝学的特性を明らかにした。さらに、これらの乳酸菌とパン酵母変異株を組合せて使用した複合発酵系パン生地におけるGABA含量の変化について検討を行った。
     
  • 16:25-17:10 乳酸菌は酵母のマンナンを認識する
    片倉啓雄、佐野良介、橋本高志、仁宮一章、塩谷捨明(阪大院・工)

    ハイマンノース型糖鎖を持つ酵母のインベルターゼをリガンドとして、溶菌酵素処理によって得たLactococcus lactis IL1403株の細胞壁画分をアフィニティ精製した。二次元電気泳動で解析したところ、DnaKなどのシャペロンタンパク質やGAPDHなどの解糖系酵素が同定され、蛍光標識したDnaKは酵母にも乳酸菌にも結合し、両者を凝集させた。乳酸菌はこれらのタンパク質を細胞表層に提示し、酵母の細胞壁のマンナンと相互作用していると考えられる。
     
  • 18:00-20:00 懇親会

二日目(6月7日)

  • 9:20-9:40 ヒトミルクオリゴ糖代謝に関わるビフィズス菌のシアリダーゼ
    *清原正志、谷川加奈、山本憲二(京大院・生命)

    ビフィズス菌の増殖因子の有力な候補であるヒトミルクオリゴ糖(HMO)にはシアル酸が結合したシアリルオリゴ糖が多く存在する。これらを資化するために必要なシアリダーゼをBifidobacterium bifidumが有していることを我々は見出し、発現クローニング法で2種類のシアリダーゼ遺伝子(siabb1、siabb2)を取得した。2種類のシアリダーゼはどちらもシアリルオリゴ糖に作用し、腸管におけるHMOの代謝に関与すると推定される。siabb1はシアリダーゼに加え、アセチルエステラーゼ活性も有するユニークな酵素であり、HMOの代謝の他に何らかの機能を有する可能性が示唆される。
     
  • 9:45-10:30 腸内乳酸菌の生き残り戦略:胆汁酸適応現象と細胞脂質組成の再編成
    *横田 篤1、松原裕樹1、加藤慎二1、森田直樹2、佐々木泰子3、扇谷 悟2、吹谷 智1 
    (1北大院・農、2産総研・ゲノムファクトリー、3明治乳業・食機能科学研)
     
    腸内細菌にとって胆汁酸は最も強力な消化管内ストレス化合物である。このため腸内細菌の胆汁酸耐性機構については様々な角度から研究が行われてきたが、いまだに決定的な解明には至っていない。私たちは代表的腸内乳酸菌Lactobacillus gasseri JCM1131Tに非致死濃度のコール酸処理により致死濃度のコール酸に耐性を獲得する適応現象を見出している。この適応において細胞膜の変化が耐性獲得に関与している可能性が示唆されたため、今回は細胞脂質に着目して解析を行った。その結果、適応処理により糖脂質とリン脂質の組成に大きな変化が起こることを見出したので、新規な耐性獲得機構として報告する。
     
  • 10:30-10:45 休憩
     
  • 10:45-11:05 Lactococcusの制限・修飾プラスミドの除去が誘引するオリゴペプチドトランスポーターオペロンの消失
    *小林美穂、野村将、木元広実、鈴木チセ(農研機構・畜草研)

    L. lactis 712に内在する9 kb プラスミドpAG6には、制限・修飾システムの認識サブユニット等がコードされているが、乳発酵に関与するlac, prt, opp 等の既知遺伝子はない。しかしpAG6除去株(712ΔpAG6)は、乳発酵能が低下した。712ΔpAG6では、オリゴペプチドトランスポーター(opp)オペロンの遺伝子発現が親株に比べ1/40-200に減少しており、発酵不良の主原因と考えられた。サザン解析の結果、712ΔpAG6ではopp-オペロン( >8 kb)全体の欠失が認められ、pAG6がopp-オペロンの安定保持に関与することが示唆された。この機作について、transposaseの発現解析の結果から考察する。
     
  • 11:10-11:30 高濃度ナイシン生産株の育種に向けた生合成経路のボトルネック解析
    *仁宮 一章、野口智子、森脇久美子、Antari Daru Cahyani、片倉啓雄、塩谷捨明(阪大院・工)

    乳酸菌によるナイシン生産は、乳酸菌自身のナイシン耐性を含めた関連遺伝子の発現量に依存する他に、高濃度のナイシンよっても抑制される。ナイシンをより高濃度に生産する乳酸菌の育種を目指して、高濃度のナイシンがLactococcus lactis ATCC11454株の増殖能、ナイシン生産能、および、nisAプロモーター活性に及ぼす影響を解析すると共に、生合成関連遺伝子nisRK, nisI, nisFEG, nisBTC, nisPそれぞれの増強効果について報告する。
     
  • 11:30-11:35 おわりに

 

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