乳酸菌工学研究部会 – 講演会(2007/5/31-6/1)
投稿日: 2008.10.06 最終更新日: 2024.05.19
乳酸菌工学研究部会では毎年,乳酸菌研究者が一同に会して,昼は各自の研究成果を発表し,夜は車座になって情報交換を行う講演会を企画しております.本年度は以下の要領で開催しますので奮ってご参加下さい.
主催 日本生物工学会乳酸菌工学研究部会
共催 日本乳酸菌学会
日時 | 2007年5月31日(木)13:50~6月1日(金)12:00 |
場所 | ホテルシャトレーゼ ガトーキングダムサッポロ 札幌市北区東茨戸132番地, TEL 011-773-2200 http://www.gateauxkingdom.com/ |
会費 | 一般17,000円,学生12,000円(一泊宿泊費・懇親会費含む) |
定員 | 70名 |
申込方法 | 下記事務局まで御連絡下さい.折り返し申込書をお送り致しますので,必要事項を御記入の上,再度事務局へ申込書を御返送下さい. |
申し込み締め切り | 5月15日(火)(延長しました) |
お問い合せ先 | 日本生物工学会乳酸菌工学研究部会2007年度講演会事務局 〒060-0003 札幌市中央区北3条西1丁目札幌パナソニックビル4階 近畿日本ツーリスト株式会社札幌事業部内 TEL 011-280-8855 FAX 011-280-2732 E-mail: hkd-ec@or.knt.co.jp 担当:小田・権平・山下 |
プログラム(確定しました)
一日目(5月31日)
- 13:50~14:00 はじめに
- 14:00~14:40 我が国伝統発酵食品に棲む乳酸菌“植物性乳酸菌”の特性について
岡田早苗(東京農大・応生科)
乳酸菌と一口で言っても、その生息範囲は非常に広い。日本を含む東アジアから東南アジアにかけての伝統発酵食品は米、大豆、野菜、芋など植物質が原料となっている。これらの多くの伝統発酵食品の発酵過程に関わる主要微生物としては、ほとんどがカビや酵母が主体とされているが、乳酸菌もしっかりと関わっている。そして、その役割や多様性には注目に値するものがある。また生息環境から来る生活力の強さがあり、またそれに派生して人の健康に対して有益な機能性も多く証明されはじめている。著者はこれらの乳酸菌を“植物性乳酸菌”と区分けしており、ここではその“植物性乳酸菌”の特性について解説をする。
- 14:45~15:25 食品機能性対応指標に基づく階層的バイオプロセス制御技術の開発
*園元謙二1,2、中山二郎1、善藤威史1(1九大院・農、2九大・バイオアーク)
平成18年度から地域新生コンソーシアム研究開発事業として、医・農・工連携による高効率な機能性食品製造技術の開発を開始した。すなわち、乳酸菌活用などの要素技術群を駆使して、機能性食品群の生産性の効率化を目的に、機能性に対応する医学的指標に裏打ちされた生産プロセス指標を明らかにし、これらに基づき各種生産プロセスを制御する、医・農・工連携による「階層的バイオプロセス制御技術」を確立する。さらに、本技術を活用して、安価な脱脂大豆を原料として、アンチエイジングに繋がる3つの機能性(抗酸化効果、血液循環改善効果、免疫調節効果等)に着目した種々の機能性食品群を開発する。
- 15:30~16:10 Lactobacillus brevis KB290(ラブレ菌)の整腸作用並びに人工消化液耐性
*矢嶋信浩、鈴木重德、信田幸大、矢賀部隆史(カゴメ株式会社・総合研究所)
Lactobacillus brevis KB290は、「すぐき」より発見され、細胞外多糖を産生する植物性食品由来の乳酸菌である。摂取することによりインターフェロン-αの産生能を高め、NK活性を増強するといった報告がある。演者らは、乳酸菌の免疫賦活作用の発現に対して、整腸→腸管免疫→全身免疫の賦活、という作業仮説を立てて研究を進めている。昨年の生物工学会のシンポジウムでは、本菌株の免疫学的作用機序やゲノム、ポストゲノム視点での研究を出口から逆に入口へ戻る形で、生物学的反応プロセスを埋める作業として進めていると、報告した。今回は、作業仮説の入口である、整腸作用並びに人工消化液耐性について説明する。
- 16:10~16:25 休憩
- 16:25~16:50 サイレージ乳酸菌の機能開発 ~Lactobacillus属乳酸菌における硝酸還元性の検討
*緒方靖哉1、渡辺誠人1、岩井 覚1、福田耕才1、野村善幸1、土居克実2、大桃定洋3
(1崇城大・生物生命、2九大院・農、3アサマ化成)
近年、飼料作物への硝酸態窒素の蓄積による反芻家畜の急性・慢性疾病の発症、さらに家畜糞尿中に蓄積された硝酸態窒素の河川・湖沼への流入による環境汚染が問題になっている。本研究は、サイレージ発酵過程において、飼料作物中の硝酸態窒素を低減化させるスターターの開発を目的とする。今回は、硝酸還元機能を有するLactobacillus属菌株の検出および応用に向けた基礎的研究を行った。
九州・沖縄地方のサイレージより分離したLactobacillus rhamnosus NGRI0110に硝酸還元性のあることが分かったので、増殖と乳酸生産の良好なLactobacillus plantarum NGRI0101(2006年度本部会講演要旨集p27-28)との混合培養を液体培養とパウチ法培養で検討した。L. plantarum が培養初期から菌体増殖と乳酸生産が良好なのに対し、L. rhamnosusの菌体増殖と乳酸生成量は培養後期で上昇した。従って、両菌株の混合培養は、長期間に渡って菌体生育と乳酸生成が継続することになり、サイレージ発酵に適していると判断した。現在、硝酸還元能の増強条件の検討や増強株の作出を検討している。
- 16:55~17:35 好熱性/耐熱性バチルス属乳酸生産菌の多様性と利用性
酒井謙二(九大院・農)
我々はあまり報告の無かった好熱性/耐熱性を示すバチルス属乳酸生産菌の分離を行っている。その結果,従来考えられていたより多様な性質を示す菌株が分布することがわかってきたのでこれまでの分離菌の特徴と我々が考えているそれらの利用の方向について紹介したい。
- 17:40~18:10 新奇乳酸菌バクテリオシンの探索とその特性
*善藤威史1、胡 智柏1、米山史紀1、中山二郎1、園元謙二1,2
(1九大院・農、2九大・バイオアーク)
乳酸菌バクテリオシンはとくにグラム陽性菌に対して優れた抗菌活性を示し、様々な分野への利用が期待されている。我々はバクテリオシン生産乳酸菌の迅速なスクリーニング法を構築し、種々の新奇バクテリオシンを見出してきた。今回は、Lactococcus lactis QU 5が生産するラクティシンQやEnterococcus属分離株が生産する新奇バクテリオシンについて、その構造や特性を紹介する。また、乳酸菌バクテリオシンの応用への取り組みについても紹介する。
- 18:30~20:30 懇親会
二日目(6月1日)
- 9:00~9:20 サワードウ乳酸菌の機能解析
中村敏英、*島 純(食総研)
サワーブレッド等のパン生地類には特異的な乳酸菌(ドウ乳酸菌)が生息している。我々は、サワードウ中の機能性成分生成におけるドウ乳酸菌の機能に着目して研究を行っている。ドウ乳酸菌は、低分子量ペプチドやγ-アミノ酪酸(GABA)等の機能性アミノ酸の生成に重要な役割を有している可能性が示唆された。また、サワードウ中に特異的に生成するペプチドを見出し、アミノ酸配列の決定および機能性の評価を行った。
- 9:25~9:45 ランダム変異導入系構築に向けたビフィズス菌からのトランスポゾン様因子の同定と解析
吹谷 智1、杉山友彦2、加納康正2、横田 篤1(1北大院・農、2京都薬科大)
ビフィズス菌は人の健康に有用な効果を持つ事が広く知られているが,ビフィズス菌における遺伝子操作系の開発が立ち遅れているため,その遺伝子機能については未だ知見が限られている.本研究ではビフィズス菌におけるランダム変異導入系の構築を目指して,Bifidobacterium longumからトランスポゾン様因子を同定し,分子生物学的な解析を行った結果を報告する.
- 9:50~10:30 rRNAを標的とした定量的RT-PCR法によるヒト腸内菌叢の網羅的解析法の開発
*辻 浩和, 松田 一乗, 朝原 崇, 松本 一政, 松木 隆広, 野本 康二(ヤクルト本社・中央研究所)
ヒト腸内には400菌種以上の微生物が複雑な生態系を構築しており、それらと健康とのかかわりが注目を浴びている。これまでヒト腸内菌叢解析には、主に培養法が用いられてきたが、操作が煩雑で熟練を要する、時間がかかるなどの問題があった。近年、培養法の代替手法として種々の分子生物学的手法が用いられるようになったが、これら手法は簡便で迅速である一方、検出感度が培養法に比べて低いという問題があった。これまで、我々は細菌に多コピー存在するrRNAを標的とする定量的RT-PCR法により細菌を迅速かつ高感度に定量する方法を開発してきた(Matsuda et al., Appl. Environ. Microbiol. 73(1), 2007)。本発表では、定量的RT-PCR法についてヒト腸内菌叢の網羅的解析への適用を試みたので報告する。
- 10:30~10:45 休憩
- 10:45~11:05 偏性嫌気性ビフィズス菌Bifidobacterium longumが示すCO2要求性について*仁宮一章1、松田和大1、金谷 忠2、片倉啓雄1、浅田雅宣2、塩谷捨明1
(1阪大院・工、2森下仁丹・バイオファーマ研)
偏性嫌気性菌の一種であるビフィズス菌Bifidobacterium longumの培養を行うため、炭酸ガスもしくは窒素ガス通気下にて嫌気培養を行った。炭酸ガス通気下では培養時間とともに生菌数が増加したのに対し、窒素ガス通気下では生菌数の増加は全く見られなかった。この実験結果から、偏性嫌気性であるビフィズス菌が増殖するためには、培養環境中から単に酸素が除去されればよいという訳ではなく、二酸化炭素の存在が必要であるということが示唆された。このビフィズス菌の二酸化炭素要求性について、その代謝経路を踏まえた検討を行った。
- 11:10~11:30 ビフィズス菌のミルクオリゴ糖資化経路
*片山高嶺1、和田 潤2、山本憲二2(1石川県立大、2京大院・生命科学)
ビフィズス菌は健康な成人や乳幼児の腸管に生息し、整腸作用や抗感染症作用など宿主に好影響をもたらすプロバイオティクスとして知られ、最近では腸管内での免疫調節機能の点からも注目されている。我々は、宿主腸管内における本菌の生息を理解するためには、その特異な糖代謝を理解することが重要であると考え、種々の糖質分解酵素について研究を行ってきた。本研究部会では、北岡らによって近年提唱された’ラクト-N-ビオース仮説’に基づいたビフィズス菌のミルクオリゴ糖資化経路を紹介するとともに、ラクト-N-ビオシダーゼおよびガラクト-N-ビオース/ラクト-N-ビオーストランスポーターについての最近の成果を報告する。
- 11:30~11:40 おわりに