乳酸菌工学研究部会 – 2006年度講演会(2006/05/30)
投稿日: 2008.10.06 最終更新日: 2024.05.19
本年は以下の要領で開催しますので奮ってご参加下さい。なお、6月1日、2日には、同じく甲府で酵母合同シンポジウムが、北里大学薬学部(東京都港区白金)で腸内細菌学会が開催されます。
日時 | 2006年5月30日(火)13時~31日(水)12時 |
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場所 | KKR甲府ニュー芙蓉 (JR甲府駅下車1.5 km) |
参加費 | 一般14,000円、学生10,000円 (1泊2食、要旨集を含む) |
定員 | 70名 宿泊は3~5名の相部屋になります。 申込み多数の場合、先着順とさせて頂きますので予めご了承下さい。 |
申込方法 | ①お名前、②性別、③ご所属、部署名(学生の方は学年もお知らせ下さい)④電話番号を明記の上、下記事務局宛てにE-mailにてお申し込み下さい。翌平日(土日祝日の場合はその後の最初の平日)までに確認メールを差し上げます。確認メールが届かない場合、参加登録ができていない可能性がありますので、再度お問い合わせ下さい。どちらか一日のみの参加(宿泊しない参加)も受け付けております(詳しくは下記にお問い合わせ下さい)。 |
締切 | 5月22日(月) 延長しました。 |
問い合せ先 | 〒565-0871 吹田市山田丘2-1 大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻 片倉啓雄 katakura@bio.eng.osaka-u.ac.jp (この表記の@は全角です。半角に打ち代えて下さい。) Tel/Fax: 06-6879-7436 |
プログラム
5月30日
- 13:00~13:10 はじめに
- 13:10~13:50 ビフィズス菌に特異的なグリコシダーゼについて
-2種の新規なGHファミリー酵素-
片山高嶺1、山本憲二2 (1石川県立大、2京大院・生命科学)
ビフィズス菌が宿主の腸管内に定着することに関してビフィズス菌が生産する糖分解酵素との関連性が指摘されている。私達はビフィズス菌が特異な糖分解酵素である1,2-α-L-フコシダーゼとエンド-α-N-アセチルガラクトサミニダーゼを有することを見出し、その機能や腸管接着との関係を明らかにするために、さまざまな酵素科学的な解析を行った。
- 13:50~14:30 新ペプチド工学としてのランチビオティック工学
園元 謙二1,2、永尾 潤一1、麻生 裕司1、中山 二郎1(1九大院・農、2九大・バイオアーク)
ランチビオティックはリボソーム上でプレペプチドとして合成された後、異常アミノ酸形成等の翻訳後修飾反応により成熟化する。これらの触媒酵素によるペプチドへの異常アミノ酸の導入は、プロテアーゼ耐性や酸・熱安定性などの物理的特性や新機能を付与するペプチドの新たな分子設計法"ランチビオティック工学"の創製を可能にする。今回、Staphylococcus warneri ISK-1が生産するnukacin ISK-1の生合成酵素の機能解析とこれらを利用したランチビオティック工学への取り組みについて紹介する。
- 14:30~15:10 分子生物学的手法を用いた糞便中ビフィズス菌、乳酸菌定量法の開発
*辻 浩和、松木隆広 (ヤクルト中研)
Bifidobacterium属およびLactobacillus属は、ヒトの健康に密接にかかわる微生物である。しかしながら、従来用いられてきた培養法は、煩雑で長期間を要するためそれらの詳細な定量解析は困難であった。今回は、最近我々が開発した細菌ゲノムに存在するrRNAオペロンDNAを標的とした定量的PCR法と、rRNAそのものを標的とした定量的RT-PCR法による糞便中Bifidobacterium 属細菌およびLactobacillus属細菌の詳細かつ簡便な定量法について解説したい。 - 15:10~15:30 休息
- 15:30~16:10 FISH-フローサイトメトリーを用いた迅速菌叢解析法の確立
とヒト糞便内ビフィズス菌動態解析への応用
吹谷 智,横田 篤 (北大院・農)
蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法によるヒト糞便中の菌数測定を迅速化するため,FISH法とフローサイトメトリーを組み合わせた計測法(以下本法とする)の有効性を検討した.サンプル中の自家蛍光物質が測定を妨害したが、Cy5標識プローブの使用により,その影響を排除することができた。その結果,フローサイトメトリーにより得られた菌数計測結果と、蛍光顕微鏡下で手動計測した結果がほぼ一致したので、本法による迅速な菌叢解析が可能であると考えられた.そこで,これまで培養法による属レベルでのデータしか報告されていない、オリゴ糖ラフィノースを摂取したヒト糞便におけるビフィズス菌の動態について,本法を適用して種レベルでの解析を行ったので、その結果について紹介する.
- 16:10~16:50 分子生物学的手法による糠床の菌叢解析
*中山二郎1、星子浩之1、安藤瑞起1、田中英俊1、田中重光1、大上和敏2、酒井謙二2、園元謙二1 (1九大院農、2大分大院工)
我が国の伝統的発酵食品である糠床の細菌叢解析を種々分子生物学的手 法により行なった。その結果、発酵過程初期には種々乳酸桿菌が増殖し乳酸発酵を行 ない、pHが低下し、その後、Lactobacillus acetotoleransが優勢になることが観察 された。L. acetotoleransは糠床中においては代謝活性が低く(RNAの転写量が極度に 低い)、また倍加時間も約12時間と他の乳酸菌に比べて3倍程度遅い。糠床の繰り 返される自然発酵において本菌は必ず最終的に優勢種となる。本菌の生理特性と糠床 の安定した菌叢との関係に興味が持たれる。
- 16:50~17:30 モンゴルの乳製品について
緒方靖哉、寺本祐司 (崇城大・応微)
ウランバートル周辺で調査した乳酒や乳製品について次の順序で紹介する。チーズ類は欧米等のチーズと比較する。1.モンゴル州立農業大学(MSUA):家畜病に対する乳酸製剤やラクダ乳の開発研究。2.市販の乳製品: 乾燥チーズアロールと軟質チーズ アールツ、硬質チーズ ホロードやビャスラグ、ラクダ乳のチーズ、カッテージタイプのチーズ、酒の香りのするチーズエレム、馬乳酒アイラグ、馬乳以外の乳酒オンダー、オンダーを蒸留して作る蒸留酒アルヒ。3.伝統的な自家製乳製品:ヨーグルト タラグ、硬質チーズ ビャスラグ、バター ツァガーントス、乳茶スーティツアイ。
5月31日
- 9:00~9:40 プロピオン酸菌を用いた 1,4-dihydroxy-2-naphtoic acid の効率的生産
古市圭介 (明治乳業(株))
Propionibacterium freudenreichii ET-3の生産する1,4-dihydroxy-2-naphtoic acid (DHNA) にビフィズス菌に特異的に作用する増殖促進効果があることを確認している。よって、本研究ではET-3株によるDHNAの効率的生産方法を検討した。ET-3株の好気培養はDHNAの生産阻害物質であるプロピオン酸およびDHNAのメナキノン生産利用への低減の観点から有効であり、嫌気培養よりDHNAの生産性が高くなることを確認した。また、好気培養条件を検証することにより、好気培養の利点を最大限に生かす培養法を開発した。さらには、炭素源を制限基質した培養がDHNA生産に適していることを見出し、前述の知見と組み合わせた高濃度培養法も開発した。
- 9:40~10:05 バクテリオシンの抗菌剤への応用
永利浩平1、竹花稔彦2、善藤威史3、中山二郎3、園元謙二3,4 (1オーム乳業㈱、2㈱アデカクリーンエイド、3九大院・農、4九大・バイオアーク)
乳酸菌が生産する天然の抗菌性ペプチド(バクテリオシン)は抗生物質のように耐性菌を誘導しにくく、ヒトの体内で分解される非常に安全性の高いペプチドである。本研究では、このバクテリオシンを医療分野へ応用するための検討を行い、バクテリオシンを利用した新規抗菌剤(プロトタイプ)を開発した。本発表では、このプロトタイプの開発経緯と諸特性について報告する。
- 10:05~10:25 休息
- 10:25~10:50 乳酸菌バクテリオシンに対する耐性機構の解明に向けた分子生物学解析及び相互作用解析
島 純、安藤 聡、安 穎、田中ふみ子 (食総研)
乳酸菌の生産するバクテリオシンは安全な食品保存料等としての利用が期待されている。しかし、抗菌物質の使用は耐性変異株の出現を生む可能性があり、バクテリオシンの実用化を図るためには予め耐性変異株における耐性メカニズムの分子機構を理解することが必要である。本発表では、バクテリオシンに対する耐性変異に関する分子生物学的解析及び分子間相互作用に関する解析について報告する。
- 10:50~11:15 サイレージ乳酸菌の機能開発 ~サイレージ乳酸菌の増殖に関わる因子の解明~
土居克実1、八坂由希子1、大桃定洋2、緒方靖哉3 (九大院・農1、国際農林水産研2、崇城大・生物生命3)
九州・沖縄などの西南暖地、タイなどの東南アジアでは高温多湿の環境下での速やかな増殖が重要なファクターとなっている。代表的なサイレージ乳酸菌であるLactobacillus plantarumでは増殖に関わるプラスミドを細胞内に保持しており、プラスミドの脱落によって増殖が著しく阻害された。本プラスミドは既報の乳酸菌プラスミドとは異なる構造と機能を呈示したので紹介する。また、高温条件で増殖するL. plantarumの特性、特に耐熱性についても紹介したい。
- 11:15~11:40 酵母との共培養による乳酸菌のケフィラン生産性の向上
片倉啓雄、夛田志緒里、塩谷捨明 (阪大院・工)
乳酸菌が生産する有用物質の多くは、乳酸菌の増殖に連動して生産されるが、増殖に伴って培地中に蓄積する乳酸の影響によって、培養後半の比生産速度が低下してしまう。保湿、増粘効果、免疫賦活作用を持つ多糖であるケフィランを生産するLactobacillus kefiranofaciensをモデルに、乳酸資化性酵母と流加共培養を行うことによって、乳酸濃度を低レベルに保ち、ケフィランの生産性を向上させることができたので報告する。
- 11:40~11:50 おわりに