【関西支部】第114回醗酵学懇話会 – 講演要旨
日時 | 2019年1月29日(火)13:10 ~ 19:00 |
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場所 | 月桂冠株式会社 昭和蔵(〒612-8361 京都市伏見区片原町300番地) |
参加費 | 1,000円(税込)/学生 無料 〈懇親会参加費〉 一般:2,000円(税込)、学生:1,000円(税込) |
「DNA二重鎖を切らない塩基編集技術」
神戸大学先端バイオ工学研究センター 西田 敬二
TALENやCRISPRなどのゲノム編集技術はそのヌクレアーゼ活性により標的部位にDNA二重鎖切断を引き起こし、宿主細胞が修復する過程で配列の変換を期待するものである。これまで遺伝子操作が困難であった材料においても飛躍的に効率がよく、また、外来DNA断片を残さず編集可能であり、従来の遺伝子組換えの規制が適用されない可能性があることから幅広い応用が期待される。一方、課題として改変結果の不確実性や、細胞毒性の問題があった。このヌクレアーゼに代わる反応機構として、私たちはDNA脱アミノ化反応を触媒するデアミナーゼによる塩基編集(Base editing)法であるTarget-AIDの開発に成功した。これはヌクレアーゼ失活型のCRISPR/Cas9に脱アミノ化酵素を結合させることでDNA塩基の変換反応を行い、点変異を実現する。これによってこれまでDNA切断に関わる不確実性や毒性を回避することができ、また、ドナーDNAの挿入なしに精密な配列改変が可能となる。本講演では塩基変換技術について、開発の過程や動作原理を解説しつつ、直近の技術進歩や派生技術、またさまざまな応用展開とその可能性について概説したい。
「超高耐熱バイオプラスチックの原料となる芳香族アミンの微生物生産」
筑波大学生命環境系/微生物サステイナビリティー研究センター 高谷 直樹
バイオマス由来材料の重要性を反映して、これまでに多くのバイオプラスチックが開発されてきた。しかし、そのほとんどは脂肪族系の炭化水素であり、耐熱性や強度に優れた芳香族系バイオプラスチックの開発例はほとんどない。この原料モノマーとなる芳香族アミン化合物の発酵生産系の構築と、非天然型のアミノ酸である4-アミノ桂皮酸を用いた超高耐熱バイオアラミドなどの開発例を紹介する。新たなバイオ材料の開発のためには、バイオで何が作れるか?何を作れば優れた材料になるのか?の両方が重要である。このための戦略と新たな芳香族バイオマスの材料化の可能性について議論する機会になればと考えている。
「清酒酵母・麹菌と上手く付き合っておいしい清酒を造る」
月桂冠株式会社総合研究所 小高 敦史
清酒醸造に必要な清酒酵母・麹菌は、清酒醸造環境で長い時間をかけて選抜、育種されてきた。杜氏や蔵人がこれらの微生物を巧みに利用することによって清酒は造られる。また、現代では意図的に育種された醸造微生物を使用することによって、多様な清酒を醸造することが可能となっている。しかし、清酒酵母も麹菌も交配による育種や劣性変異株の取得が、研究用の微生物と比べて難しい。その理由として、有性生殖が困難、多倍体/多核などがあげられる。本講演では、これらの特徴に従い、清酒酵母・麹菌と上手く付き合っていく方法について議論したい。