日時2018年1月29日(月)13:30~19:00
場所大関株式会社 会議室 (〒663-8227 兵庫県西宮市今津出在家町4番9号)
参加費1,000円(税込)/学生 無料
〈懇親会参加費〉 一般:3,000円(税込)、学生:1,500円(税込)

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「醸造過程終盤における酵母の生き残り戦略」

京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科 井沢 真吾

高濃度のエタノールは、自身でエタノールを産生する酵母にとってもストレスとなり、さまざまな障害を細胞内に引き起こす。ワインや清酒の醸造過程終盤は高濃度エタノールをはじめとする非常にストレスフルな環境だと考えられるが、このような過酷な状況における酵母の生理は十分に解明されていないのが現状である。本講演では、高濃度エタノールストレス下における酵母細胞の解析で得られた知見を通して、醸造過程終盤で酵母がどのように生き残りを図ろうとしているのか考察したいと考えている。

 

「麹菌の多様な遺伝子情報を活用した味噌醸造技術を目指して」

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 楠本 憲一

和食に欠かせない味噌などの醸造食品は、麹菌を使って製造される。そのため、醸造産業上重要な麹菌の生物学的特性を科学的に解明し、醸造食品の品質維持と向上に関わるような研究が必要となる。この麹菌の一種Aspergillus oryzae(以降、便宜的に麹菌と呼ぶ)のゲノム情報を解明した。その情報を活用して、味噌などのおいしさに関わると考えられる麹菌酵素の解明に取り組み、新しい醸造技術の開発につながる成果が得られたので以下にご紹介したい。「だし」の旨味成分を分解する麹菌酵素群を解明し、その分解活性が低い菌株を育種することにより、加熱を回避した省エネルギーだし入り味噌製造技術開発への道筋を示した。また、麹菌のゲノム上に見いだされた全プロテアーゼ遺伝子の機能解明に共同で取り組み、新規な基質特異性を示す酵素を多数発見した。これらのプロテアーゼの組合せが味噌の多様な旨み発現に寄与していると考えられる。

 

「酒粕を利用した抗疲労素材開発」

大関株式会社総合研究所 製品技術開発グループ 平田 みよ

社会構造の複雑化や急激な変化に伴いストレス社会となった現代において、多くの人々が日常生活や普段の仕事の中で「疲労」を感じている。実際に、2012年厚生労働省の疲労調査研究班が一般住民4,000名を対象に疫学調査を行った結果、1/3以上の人々が半年以上続く慢性的な「疲労」を感じていることが明らかとなっている。一方、日本固有の発酵食品である酒粕は、アミノ酸、有機酸、ビタミン、ミネラル、食物繊維などのさまざまな栄養成分が含まれており、酒粕や米麹などを用いた甘酒は、古くから『飲む点滴』として認知され、「疲労」に効果があることが経験的に知られている。我々はこの点に着目し、酒粕を酵母と乳酸菌で再発酵させることで、さらに抗疲労成分であるL-オルニチンを高含有した素材を開発した。本講演では素材開発の概要と、疲労動物モデルやヒト試験での機能性評価について報告する。

 

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