日時 2015年8月20日(木)13:30~19:00
<講演>13:30~15:40(途中10分休憩有り)
場所 サントリーワールドリサーチセンター
京都府相楽郡精華町精華台8-1-1  Tel: 0774-66-1110
参加費 1,000円(税込)/学生 無料

講演要旨

  • 「意外と知らない硫黄同化を最大限に利用した有用物質生産」

     奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科  大津 巌生

生 物にとって炭素、窒素、硫黄は三大元素である。炭素源や窒素源が複数存在する場合、生物は、より好ましい栄養源を優先的に利用し代謝する機構が備わってい る。これはより効率的な代謝(同化、異化)が可能な栄養源を選択的に利用することで細胞の増殖速度を高め、生育する環境下でより早期に占有し、他の生物よ り優位な状況を確立するための生物の巧みな生存戦略の一つである。しかし、硫黄源の選択的利用に関する報告はなく、その機構については理解されていない。 そこで大腸菌における硫黄の選択的利用機構を利用したアミノ酸(システイン, エルゴチオネイン)発酵生産への応用について最新の情報を報告する。これらの知見を用いて、硫黄バランスで健康チェック可能なシステムの構築について紹介 する。
 

  • 「増殖非依存型バイオプロセスによるバイオ燃料・グリーン化学品生産」

     地球環境産業技術研究機構バイオ研究グループ  乾 将行

バ イオマス資源からのバイオ燃料やグリーン化学品製造を行う新規産業を意味するバイオリファイナリー社会の実現が近づいている。このような背景の下、 RITEではリグノセルロース系バイオマスを原料として、有用工業微生物コリネ型細菌を用いたバイオ燃料・グリーン化学品製造技術開発を行ってきた。我々 は、このコリネ型細菌が還元条件下では、増殖は抑制されるものの代謝機能は維持され、糖類を代謝し有機酸を効率よく生成する現象を見出した。これを基に、 高効率バイオプロセス“増殖非依存型バイオプロセス”の開発を進めている。本講演では、該バイオプロセスを用いた各種バイオリファイナリー製品の生産技術 開発の現状と今後の展望について紹介する。
 

  • 「光合成機能を向上させた形質転換植物による代謝・形態形成制御機構の解明」

     近畿大学農学部バイオサイエンス学科  田茂井 政宏

光 合成の過程において、カルビン回路により大気中のCO2を固定してショ糖やデンプンに変換するまでに多くのプロセスを含んでおり、ソース(光合成)能力、 シンク(貯蔵)能力および転流能力のバランスによって植物の炭素代謝は成り立っている。従って、植物の収量を増大させるにはこれらをバランス良く強化する ことが望ましいが、まずは光合成能力を向上させることが最も重要となる。一方、光合成により葉で作り出した糖と、根から吸収した窒素は、いずれもアミノ酸 などの主要な構成成分であり、植物細胞における炭素・窒素代謝物の相対量比(C/Nバランス)は厳密に制御を受けている。そこで、光合成炭素代謝に関連し た酵素遺伝子を導入した形質転換植物を用いて、光合成能およびソース・シンク器官の炭素代謝、さらには窒素代謝、形態形成などに及ぼす影響を検討し、光合 成増大および生育促進に関連する因子を網羅的に解析した結果について紹介する。
 

  • 「ホップ品質に影響を及ぼす栽培要因の制御」

     サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社 研究部  松井 宏夫

ホッ プは麦芽・酵母と並んでビールにとって重要な原料である。ビール品質の苦味、香り、コクへの寄与が知られており、これらホップ由来の香味を制御する手段と して、品種の選択、ペレット・エキスなどの加工形態の選択、また、煮沸工程での投入タイミングの設定、酵母種の選択や発酵条件の検討が行われている。しか しながら、ホップは農作物であるためこれらを調整するだけでは狙いのビール品質を安定的に造りこむことは難しい。ホップ品質に影響を及ぼす要因として、気 温・雨量・土壌などの環境要因、株齢や栽培方法などの作業要因が挙げられる。本報告では、これら要因の中で制御可能である作業要因がホップ品質に及ぼす影 響について紹介する。

 

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