私たちの体はいつも無数の病原体からの攻撃にさらされていて、その病原体も突然変異(遺伝子が変化すること)により日々その性質を変化させていきます。そのような病原体に対抗するため、私たちの体には、数億種類ともいわれる「抗体(病原体に結合して、その働きを弱めるタンパク質)」が常に準備されています。

抗体はタンパク質ですので、遺伝物質であるDNAから転写・翻訳されてつくられます。しかし、私たちの細胞にあるゲノムDNAには、数億種類もの抗体の遺伝情報を書いておくだけのスペースがありません。そこで生物は、抗体遺伝子を二つ(VとJ)あるいは三つ(VとDとJ)のパーツに分解し、V、D、Jをそ れぞれ4~40個ずつ用意しておき、抗体遺伝子を完成させるときにV、D、Jのパーツを1種類ずつ選んで結合させる、というしくみを持っています。こうす ることによって、パーツの種類は少なくても、それらを組み合わせてできた抗体には非常に多くの種類を生みだすことができます。

しかしゲノムの中の遺伝情報をこのように組み換えることは、ひとつ間違えると「がん」の原因にもなり非常に危険です。そこで、このような組換えを起こすための酵素の働きは、生殖細胞のほかはBリンパ球やTリンパ球に限られています。
 

ひらく、ひらく「バイオの世界」 写真館 「抗体の多様性を生みだすしくみ」


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