『ひらく、ひらく「バイオの世界」』イラスト・写真館
―植物と微生物のいい関係(Q45)―
植物は、自身がつくりだした糖やアミノ酸、ビタミン類などの栄養素や酸素をまわりに分泌します。そのため、とくに植物の根の近く(根圏といいます)には、それらを求めて多くの微生物が集まります。このような根圏の微生物の中には、植物が必要とする栄養(窒素やリン)を植物が利用しやすい形に変換したり、植物に悪影響を及ぼす病原菌や化学物質などを取り除いたりと、植物との「共生関係」を築いているものがいます。
写真のスフィンゴビウム属細菌も根圏にいる微生物です。この細菌は、4-tert-ブチルフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールAなどの内分泌撹 乱化学物質(環境ホルモンとも呼ばれ、生き物の体の仕組みを混乱させる作用を持つ物質)を分解し、無害化します。この細菌は、植物から栄養素や酸素を受け取る代わりに、有害物質を分解して植物の生育を助けているのではないかと考えられています。
環境ホルモンを含めて有害な化学物質のなかには、微量 でも有害で、分解することが難しく、環境中に長く留まりやすいものが多くあります。このような化学物質を分解できる微生物がいると、とても頼もしいですね。実は、植物と共生する微生物は植物だけでなく、私たちが住む地球の環境も守ってくれているのです。