【本部】第15回生物工学懇話会
日時 | 2010年5月28日(金)14:30 ~17:20 |
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場所 | 千里ライフサイエンスセンタービル801~802号室 豊中市新千里東町1-4-2 TEL:06-6873-2010 |
参加費 | 無料 |
プログラム | (司会 稲垣 賢二)
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講演1 「地球をめぐる水と水をめぐる人々」 14:45~15:30
東京大学・生産技術研究所 沖 大幹
水は地球表層を循環している資源なのに,なぜ水不足で困っている人が何億人もいるのでしょうか.足りないのなら,運んだり,貯めておいて必要なときに使ったり,いざとなれば海水の淡水化や使った水を浄化して再利用すればよいのではないでしょうか?? そもそも我々はどのくらいの水が毎日のくらしに必要で,どのくらいの量を使っているのでしょうか.世界のどういう地域が水不足で困っていて,地球温暖化に伴う気候変動によってどのような問題が顕在化するおそれがあるのでしょうか.水ストレスとはどういう概念で,食料交易は果たして水ストレス解消に役立つのでしょうか.工業生産や食料生産に伴うウォーターフットプリントはいったいどのくらいで,これは果たしてカーボンフットプリントと同様,商品のラベリングに使われるようになるのでしょうか.そしてそれは適切なのでしょうか.これらの疑問について,時間の許す限りお話したいと思います.
(座長:坂口 正明)
講演2 「ビール醸造法とその香味に及ぼす影響について」 15:35~16:20
アサヒビール株式会社・酒類技術研究所 小林 稔
ビールは原料や発酵由来の香味と炭酸ガスによる刺激が調和したお酒である.お客様の嗜好に合わせて醸造技術者は香味設計する必要があるが,技術の選択肢はそれ程多くはない.現在市場には様々な香味特性を有したビール類が流通し,低価格の新ジャンル醸造酒がシェアを拡大している.発泡酒や新ジャンルは麦芽比率が低く,これゆえビールにない華やかな香味を特徴とするが,発酵原料の窒素源量が少ないため,酵母へのストレスにより生じる不快臭味を抑制可能な醸造法を導入する必要がある.おいしいビールの統一的定義は困難であるが,当社では不快臭味がなく,洗練された香味を有することを1つの定義としている.近年の分析機器の進歩により,香味に影響する成分を特定し,その分析値により品質制御を行ったり,その物質の生成機序を解明し,工程改善や原料選択を行うことが可能となった.同時に,香味品質を自由自在に制御し,嗜好に合ったビール醸造が可能となりつつある.本講演ではビール醸造法が香味へ及ぼす影響について,最近の演者らの検討結果を紹介したい.
(座長:秦 洋二)
講演3 「ウイスキーの品質とつくりへのこだわり」 16:30~17:15
サントリー酒類株式会社・スピリッツ事業部 輿水 精一
ウイスキーを一般的に定義するならば,『穀類を原料として,糖化,発酵の後に蒸溜を行い,木製の樽で貯蔵熟成させてできる酒』となる.この樽で5年,10年,時には30年以上も寝かせることにより,すなわち時間をかけることで初めて生み出される複雑で芳醇な味わいこそ,ウイスキーの最大の魅力である.日本のウイスキーづくりは1923年,サントリーの創業者である鳥井信治郎が京都と大阪の境,山崎の地に日本初のモルトウイスキー蒸溜所を建設することにより始まった.目指したものは日本人の感性で日本人の嗜好に合うウイスキーづくりであった.85年を経て,今や日本のウイスキーは世界の注目を浴びる存在となった.本講演では,様々なハンデキャップを乗り越えながら,熟成の美味さにこだわってきた,サントリーのウイスキーづくりについて紹介する.
(座長:町田 雅之)
■ 関連記事:【本部】2010年(平成22年)度総会・評議員会(2010/5/28)
https://www.sbj.or.jp/news/news_20100226-3.html